「漫才はネタが命です。何より、ネタの面白さです。どれだけ達者な漫才師がやっても、ネタが面白くなかったら面白くならない。逆に、ネタが猛烈に面白かったら、素人さんがやっても、ある程度は面白い。だから、漫才師は面白いネタを作らないといけない。それが答えなんですけど、それが難しい」
言葉の主は漫才コンビ「オール阪神・巨人」の二人。これまで幾度となくインタビューをしてきたが、漫才にとっての“幹”を尋ねると、どちらからともなく、決まって冒頭の話が出てくる。
20日付で発表された春の褒章で、二人に紫綬褒章が贈られた。漫才界のトップランナーとしての存在感に新たな称号が加わることにもなったが、日々、関西でお笑いの取材をする中で痛感することがある。若手芸人らがイベントやテレビ番組などで披露するイジリネタに、二人の名前が頻繁に登場することだ。
▼少し前から、阪神が若手女性コンビ「紅しょうが」の稲田に対し「一緒にUSJに行こう!」と誘っている。ただ、単に行くだけではなく「僕が学生服を着るから、君はセーラー服で来てくれる?青春時代を思い出したいねん!」という要求のハードルの高さから、いまだに実現していない。
▼楽屋で話をしている時、阪神が「この前の営業先での話、面白かったよなぁ!あの時、お前もいたよな!?」と弟子に同意を求める流れがよくある。しかし、その話の流れで弟子が居合わせた事例は一度もなく「そうやったかなぁ…」と意気消沈で終わる確率は100%。
▼自身が経営するスナックで客とカラオケ勝負に。どちらも歌唱力に自信があるだけに、点数で負けた方が退店するというカラオケ決闘ルールで対戦。ハイレベルな展開ながら、巨人が僅差で敗退し、潔く店を出た。その場に居合わせた若手が心配になって巨人を探しに行くと、別のカラオケバーに入店し、既にリベンジのため同じ曲を練習していた。
▼仕事で地方に行った際、若手たちとスナックへ。飲んでいるうちにホステスの一人が酩酊し、巨人の肩にしなだれかかってきた。相手の体を支えるためとはいえ、肩を抱けばいかがわしい行為になってしまう。かといって、手を差し伸べなければ女性が倒れてしまう。一瞬考えた後、巨人はギュッと拳を握り締め、腕を一本の棒のように伸ばしてホステスの背中を支えていた。