野球に関するトレーディングカード、いわゆるベースボールカードは昔から熱心なコレクターが大勢いることで知られる。当然の帰結として希少なカードは高値で売買されているのだが、先日には25ドルで買った遺品の中古ピアノの中から見つかったベーブ・ルースのカードなどが、オークションで13万ドル(約1450万円)近い高額で落札されたことが話題になった。
金額ということでは往年の名選手を対象としたレアカードには及ばないが、今年4月にメジャーデビューしたばかりの超有望株、ブルージェイズのブラディミール・ゲレロJr.内野手のカードは1日で1万9396枚を売り上げ、昨年に大谷翔平選手(エンゼルス)がマークした1万7323枚を上回る新人最多記録になったという報道もあった。
メジャーリーグのベースボールカードで歴代最高値が付いたのは、20世紀初頭にパイレーツでプレーした殿堂入り打者ホーナス・ワグナーを題材とした「1910 T-206 Honus Wagner」のうち、カードの状態が最高を示す「エクセレント」だったセット。アイスホッケーのスーパースターとして知られるウェイン・グレツキー氏も所有していたことがあり、2007年には235万ドル(当時のレートで約2.8億円)で落札された。
このカードセットはマニアの間では知らぬ者がないほど有名。なぜここまでの高値になったかというと、ワグナーが人気のある大打者だということもさることながら、やはり希少性と話題性が肝となっている。
そもそもこのカードシリーズはたばこ会社が景品として作成していたものなのだが、嫌煙家のワグナーは青少年の喫煙増加につながりかねないカードに自分が利用されるのを望まず、制作会社による回収騒動に発展。その混乱の中で未回収のカードが発生し、現存しているのは50枚前後、状態の良いものはほんの数枚で、激レアカードとしての地位を不動のものとしたのだった。