「週刊少年ジャンプ」で昭和51(1976)年に始まり、平成28(2016)年に40周年、 コミック全200巻で連載最終回を迎えた秋本治さんの国民的漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(通称「こち亀」)。平成2(1991)年に発売された第68巻の著者コメントには、こんなことが書かれていた。
<ビデオカメラがどんどん小型軽量になり、価格も安くなったため、誰でも気軽に使うようになった。旅行先で、ビデオカメラとカメラを両手にかわるがわる映している姿を見かけ る。
この二台を一台にしたら、便利だと思う。デジタル高画質、プリンター機能もつけば、その場で写真も見られる。
今に、そのカメラにTV、電話、FAX……という多機能が登場するかも……>
「こち亀」の主人公・両津勘吉は、様々な分野で最先端情報を作中で紹介することも多かったが、それも秋本さんの時代を先読みする豊富な知識があってこそ。平成2年に“予言”したことは、現代ではスマートフォンの普及で当たり前とった。
一方、技術革新の結果、消えてしまったものある。
大正大学地域構想研究所の中島ゆき主任研究員は、5年に1度行われる国勢調査で使われる職業分類をもとに、平成の約30年間で仕事の職種にどのような変化が生まれたのかを調べた。すると、平成2(1991)年と平成27(2015)年では「タイピスト」「腹話術師」「 キャバレーのレジスター係」「ミシン販売員」 など24の職種が削除されていた。 削除の基準は明示されていないが、中島さんは「働く人が1200人以下になると、削除されるようです」と話す。
消えた職業を見ると、時代の移り変わりも見えてくる。昭和時代に「職業婦人」の花形職業だった「タイピスト」は、タイピングのみをする専門職だった。それが、コンピューターの小型化によって個人所有のパソコンが普及し、タイピングの仕事は減った。パソコンの普及前には昭和53(1978)年にワープロの発売もあったことも大きかった。