塩分摂取量に制限があるのは、子どもの頃の血圧と大人になってからの血圧に関連があること、そして子どもであっても、塩分摂取量を控えることで血圧が下がることが研究からわかっているからです。

 子どもの血圧と塩分摂取量を調べた14の研究を、WHOがまとめて解析した結果があります。それによると、塩分控えめの食事にしていると、収縮期血圧は平均0.84ミリメートル水銀(mmHg)だけ下がることがわかっています。どのくらい塩分控えめにしたかはそれぞれの研究によって異なりますが、14の研究のうち4つは、比較対象のグループの3分の2以下に抑えられたとされています。

 血圧が0.84というのは大きな数字ではないかもしれません。しかし、アメリカでは食塩のとりすぎによる問題が実際に出てきています。

 アメリカでは1~3歳で3.8グラム、4~5歳で4.8グラム、大人で5.8グラムが上限量とされていますが、実際の摂取量は、1歳からすでにそれより多いことが明らかになっています。6歳から18歳の平均摂取量は8グラムを超えていて、アメリカの子どもの10人に1人以上は境界域高血圧または高血圧です。人種差はあるかもしれませんが、塩分のとりすぎは子どもでも高血圧を引き起こすようです。

■加工食品やスープに注意

 塩分が多い食品はある程度決まっていて、加工食品やスープが主です。腎機能が成熟する1~2歳までは、味付けを薄めにする、お味噌汁は薄める、チーズやハム、パン、チキンナゲット、練り物など塩分の多い食品を食べさせすぎない、など注意する必要がありそうです。

 しかし2歳以降は、子どもだから塩分を特別に控えなければいけないわけではありません。塩分摂取量はエネルギー摂取量に対しての比で考えているので、偏食がないと仮定すれば、子どもも大人も味付けは同じで、食べる量が違うだけ、ということになります。

 もちろん味付けを薄くするに越したことはありませんが、多少しょっぱいものを食べても、1日の食事全体で調整できれば良いでしょう。子どもだけでなく、大人も一緒に薄味の食事を楽しめれば理想的ですね。

◯森田麻里子(もりた・まりこ)
1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表

著者プロフィールを見る
森田麻里子

森田麻里子

森田麻里子(もりた・まりこ)/1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産し、19年9月より昭和大学病院附属東病院睡眠医療センターにて非常勤勤務。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表

森田麻里子の記事一覧はこちら