YouTuberというと、最近ではその高額な収入も話題になっている。となれば、アドバイスをするのも「広告収入のためでは?」と勘ぐる人がいても無理はない。一林医師によると、現時点では無償。理由は配信で広告をつけられるほどの基準(総閲読数など)に達していないためだが、いずれは「マネタイズをしなければいけない」と正直に明かす。その理由とは?
「お金を取らずに情報を垂れ流すのでは、責任の所在がどうなのかという指摘もあります。ただ、私自身はお金がほしいというわけではありません。もしマネタイズができれば、その収益で精神疾患を抱える人たちの支援に使えるような仕組みを作ってみたい。最近では10代の患者さんも増えていますが、一度精神疾患にかかると、社会からドロップアウトしたかのようになってしまい、立て直すことが難しくなる場合もよくあります。そういう人たちが活躍できる場を作っていきたいんです」
疾患を伴う人たちにゆくゆくは還元したい――。自分の時間を使ってまで悩みや相談に答え続ける裏側には、そうした日本の医療の現状と精神医学を変えたいという熱い気持ちがある。
「精神病を早く治すために『どれだけ早く精神科に行くかが大事』という情報や、単純に聞こえるかもしれないですけど『自殺はよくないよ』ということを伝えたい。自殺しようとする人を止めるのは本当に大変で、一人ひとりにオーダーメイドな対応をしなければダメなんです。なのに、仕方なくマニュアルで画一的に進めなければならないこともあり、現場の医師はみな困惑しています。Twitterには拡散力があるし、VTuberでしか届けられない人もいるはず。うまくいけば、いずれ日本の精神医学を変えられるかもしれないと思っています」
(AERA dot.編集部・福井しほ)