「趣味でやっていることなので、1日に返せる数にも限界があります。パッと返せるものもあれば、1時間くらい悩むものもある。ですが、私を頼ってくれているので、今出せる最高の回答をしなければいけないと思っています」
Twitterだけに留まることなく、VTuberとしても始動した一林医師。「うつ病は甘えという人に一言」「パニック障害がパニックを起こすことだと思い込んでいる人に見てほしい動画」といった病気への理解を促す投稿から、精神科受診によって加入できる生命保険が限られてしまうことや住宅ローンについて語る「精神科の受診の前にやったほうが良いこと3選」など、実用的な動画も投稿している。ただ、動画配信は「あくまで一方向性」と言い、ユーザーから “この医師は素晴らしい人だ”と一方的にプラスに受け止められてしまうことも危惧しているので、「常に一定の距離感を持つことも意識している」と話す。
こうしたネット上でのユーザーとのやり取りで気になるのが、医師法や医療法への抵触、また「オンライン診療」への該当などだ。医師の偏在を補うべく、厚生労働省が旗振り役となって進めるオンライン診療は将来的に期待されている分野ではあるが、現段階では、まさにその土壌を固めつつある段階とも言える。この「クロネコ(仮)」の動画のやり取りについて厚労省医政局医事課の担当者に確認すると、「バーチャル精神科医の活動や質問への回答は医学知識を伝えているだけなので診断行為ではありません。また、リアルタイムで診療するというオンライン診療の定義を満たしていません」との見解を示した。
一林医師自身も「診断」ではなく「アドバイス」というスタンスで答え続ける。たとえば、
<常に親の理想でいようとふるまうことはおかしいですか?>
という質問に対しては、
<おかしいことではないです。人によって「自己決定」が好きな人と「支援を受けた意思決定」が好きな人がいるので、親の理想どおり生きることが楽であれば特に問題ありません。 何らかの不利益を被るのであればご対策ください>
と、あくまで一つの選択肢を提案するだけにとどめている。実際、やり取りを通じて「日常生活が改善された」という声も届いた。さらに、他人の悩みを見て、「自分だけではない」と共感することで不安を和らげるケースもあるという。