関西観光ツアーのイスラエル人団体。添乗員の言うことを聞かないので一苦労します
関西観光ツアーのイスラエル人団体。添乗員の言うことを聞かないので一苦労します
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Nissim Otmazgin(ニシム・オトマズキン)/国立ヘブライ大学教授、同大東アジア学科学科長。トルーマン研究所所長
Nissim Otmazgin(ニシム・オトマズキン)/国立ヘブライ大学教授、同大東アジア学科学科長。トルーマン研究所所長

 飛騨高山で知られる岐阜県高山市は2016年、ヘブライ語で書かれた観光マップを作成しました。最近、外国人観光客が増えている高山市では、英語や中国語など11カ国語の観光ガイドが作られていますが、人口約800万人の小国イスラエルのための案内書をわざわざつくったのは、「イスラエル人が年間一万人も高山市に観光にくるためですよ」(同市担当者)というのが理由です。

 なぜ高山観光にくるのかは後ほど述べますが、イスラエル人が多いのは高山だけではありません。主要な観光地でも同じです。昨年4月に京都に行ったとき、三条の商店街、清水寺三年坂、哲学の道を歩いているときでさえ、ヘブライ語が聞こえてきました。団体旅行だけではなく、家族連れや若いバックパッカーのイスラエル人も増えてきました。日本旅行熱は本物です。

 イスラエル人にとって日本は、遠くて不便、物価が高いと三重苦な国でした。最近の円安、イスラエルの経済力アップでかなり事情が変わりました。17年には、一人当たりのGDPで日本を追い抜いています。物価高はイスラエルも同じで、東京の物価はそう高くは感じなくなってきています。エルサレムのちょっとしたホテルなら一泊2~3万円はします。

 イスラエルは四国くらいの面積しかありません。こんな小さな国からなぜ、日本にこんなに観光にくるようになったのでしょうか。第一にはイスラエル人の「旅行好き」な国民性があるでしょう。人口800万人のうち半分の400万人が一年間で少なくとも一回は外国旅行にでかけているという統計があります。だから、休日ともなると一番大きなベン・グリオン空港はとんでもないくらいに混みあっています。空港の組合はイスラエルで最も強いのですが、もしストライキになるなら国全体はものすごい混乱になるでしょう。だからというわけではないでしょうが、この組合の要求はたいてい通ってしまいます。

 もう一つの理由はユダヤ民族しての文化と歴史的な背景です。1948年にイスラエルが建国するまで、ユダヤ民族は約2000年間にもわたり、しばしば世界中のあちこちを動いてきました。あるときは迫害から逃れ、また生活のあてを探して……。ユダヤ民族のディアスポラ(民族離散)の存在は、世界を旅するという国民性を考えるうえでは大事なことです。またイスラエル経済が世界の市場に広がっているということも忘れてはいけません。経済発展を続けるために国外で勉強し、ビジネスの好機をうかがい、外からなにかを学ぶことに国を挙げて奨励しています。ユダヤ人の頭のなかは大きな地球儀があるのかもしれません。

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