自分を認められない人というのは、多くの場合、他人に対しても同様に振る舞いがちです。そのことが、相手の話をきちんと聞くことを難しくさせます。

 自分に厳しい人は他人にも厳しく、いろいろなことが許せず、話が聞けなくなります。

 また、やたら相手に細かい人、相手の欠点ばかりが見えて、それを指摘したり、気にしている人は、誰にも好かれないだけでなく、相手と同じくらい自分の短所も欠点も見えている状態がずっと続きますから、それでメンタルに不調をきたしたり、心身の不調をうったえるようになります。

 心理学やカウンセリングの理論では、すべての人間関係は、自分を映し出すただの鏡だと捉えます。もし、相手の話を聞いて嫌な気持ちになったり、イライラしたりするのであれば、そのネガティブな感情は、すべて自分を映しているのです。

 相手の話をきちんと聞ける人というのは、自分自身との関係が良好な人です。

 自分で自分を褒めることができて、ときに「できない自分」も認めることができて、自分で自分を許せる人なら、そういう人は相手の良い部分に目が行きやすく、できていない相手も認められて、相手を許せる人です。私がこれまでに出会った本当の「聞き上手」たちは、この点で共通していました。

 聞き方について教える本がいくら読まれても「聞き上手」が一向に増えないのは、多くの聞き方本やノウハウが、この「自己肯定」という点を軽視しているからではないでしょうか。

 そもそもなぜ相手の話を聞かなければならないのか、そう感じてしまう人は、自分が自分のことをちゃんと認められているかどうか、一度自問してみてください。そして、人の話を聞くときに、相手を認め、同様に自分を認めるよう意識してみてください。

 聞き方についての小手先のテクニックをいくつも学ぶよりも、人とのコミュニケーションが劇的に改善するかもしれません。