チームの層の厚さに阻まれているのは真砂勇介(ソフトバンク)も同様だ。2016年オフに行われたU-23W杯ではMVPに輝くなど4番として大活躍を見せ、2017年にはプロ入り初ホームランも放った。だが、昨年はわずか1試合の出場に終わっている。打つだけでなく運動能力も高い選手だけに、環境が変われば、日本ハムに移籍した大田泰示のようにブレイクする可能性も十分にあるだろう。
内野手では、金子一輝(西武)が面白い。2016年、2017年は二軍でも2割前後の打率だったが、昨年は打率.257、出塁率.326を記録し、チーム2位となる16盗塁もマーク。一軍昇格を果たし、プロ初本塁打もマークした。まだ細身だが運動能力の高さは魅力で、年々着実にパワーアップしている。今年で24歳とまだまだ若さがあるだけに、若手の内野手が手薄な中日などは補強ポイントにもマッチする選手である。
その一方で対象となる選手を並べてみて気づいたのが、中日の数の多さである。育成選手を多く抱えているわけでもないのに二軍暮らしが続いている選手が多いということは、いかに過去のスカウティング、育成が機能していない証明でもある。球団の戦略を振り返る機会を与えるという意味でも、「現役ドラフト」の導入は有効ではないだろうか。
過去にはいずれも中日から楽天に移籍したケースで、鉄平が移籍後に首位打者に輝き、小山伸一郎が中継ぎの中心となるなど、出場機会を与えられることで開花した選手は決して少なくない。また、そのような選手の存在が、球界の活性化に繋がることも確かである。
今回はあくまでも一つの案で選手をピックアップしてシミュレートしてみたが、近い将来、球界を活性化させる「現役ドラフト」が実現することを期待したい。(文・西尾典文)
●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。