いま起きていることを伝えるのも大切だが、大手メディアではなくフリーだからこそできることを考えなければ、発表の場は狭まっていく。ジャーナリストの道を歩んでいる人には、たくさんの情報やニュースの中に紛れ込んでしまうものではない写真や文章を目指してほしい。群れるのではなく、時には孤高を恐れず、自らの道を進んでほしいと願う。メディアや権威を一方的に信じるのでなく、自らの目と自らが磨いた感性で確かめながら歩んでほしいと願う。
私は最初から正義感や自らを犠牲にして報道に殉じる覚悟を持っている人は少ないと思う、いやほとんどいないと言っていいかもしれない。が、現場で経験し、たくさんの出会いがあって、「伝える人」として鍛え上げられていく。現場でこそ、ジャーナリストは磨かれ、育っていくはずだ。
世界は広く、深く、驚きに満ちている。自分の狭い先入観や思い込みではなく、驚きや偏見を打ち破るものを見つけ伝えてほしい。そんな写真や文章はさまざまな形で発表することができる。一権力者が扉を閉ざそうと、写真が人の心を打つものであれば、道は必ず開ける。私はペンとカメラさえあれば、人の心を打つことはできると信じている。見た人が感動で身が震えるような、心の深いところがじんわりと満たされていくような素晴らしい写真を世界は待っている。
(文/長倉洋海)
※「アサヒカメラ」オンライン限定記事