昨年12月から年明け1月の間に、経団連会長(日立製作所会長)中西宏明氏の三つの発言が注目を集めた。さらに、17日には、日立の英国への原発輸出「凍結」が決まり、日本の原発産業が大きな岐路に立っているという報道が相次いだ。
この一連の発言を読み解き、今後の「原子力ムラ」の動きを占ってみたい。
◆儲かる原発が儲からなくなった
原発事業は、電力会社の地域独占と総括原価方式による利益保証制度によって確実に儲かる商売だった。しかも、発電所の施設・設備の価額が高いほど利益が大きくなる仕組みなので、電力会社は、原発の設備・施設を納入するメーカーの言い値で購入することができる。したがってメーカーから見ても、原発関連事業は、確実に儲かる事業だった。
ところが、2011年の3・11福島原発事故後、環境が激変する。原発に関する安全規制がどんどん厳しくなって、原発のコストは右肩上がりとなった。一方、世界では、再生可能エネルギーのコストが劇的に下がり、原発より再エネの方が大幅に安いという時代がやって来た。経産省の政策により、再エネコストが高止まりする日本でも、再エネのコストはさらに低下するのは確実だ。
いくら総括原価方式があると言っても、電力小売り自由化により、他の電力との競争は完全には避けられない。電力の売り上げが減れば、利益も減り、電力会社による原発の更新や新設は望めない。その結果、メーカーの利益の源泉も脅かされる。
◆太陽光バブル創出は再エネ抑制の布石
実は、政府とは違い、電力会社もメーカーもそのことはよくわかっていた。
しかし、3・11直後は、吹き荒れる反原発の世論があったため、電力会社もメーカーも、決して、「原発推進のために政府の支援を」という声を上げることはしなかった。頭を下げて、嵐が通り過ぎるのを待つ作戦だ。
一方、「脱原発」派のうっぷん晴らしのガス抜きにと、経産省は、12年から再エネ電力の全量買い取り制度を開始した。この時、脱原発派は、「再エネ推進元年」だと言ってお祭り騒ぎをしていたが、まさに原子力ムラの作戦にはまった格好だった。