■あらゆるモノをのみ込むケータイ

 もう一つ、現在のスマートフォンの流れを作り出したケータイのトレンドをご紹介しておきましょう。それは、生活に必要なあらゆるモノをのみ込んでいく存在であった、ということです。

 ケータイは電話を持ち運べる存在でしたが、その後、iモードなどの登場でネットにつながる情報端末として利用できるようになり、若い人にとっては第一の情報手段となり、パソコンやゲーム機の代わりを果たすようになりました。

 その後もカメラ付きケータイが登場し、またおサイフケータイによって決済機能が利用できるようになり、ワンセグでいつでもどこでもテレビが見られるようになりました。

 サッカー日本代表の試合を電車の中で楽しんだり、東日本大震災で通信が制限されているときでも、最新のテレビの情報をキャッチするなど、楽しみや生死を分ける場面でも活躍したことが印象的でした。

 ケータイさえあれば大丈夫。もちろん過信は禁物ですが、生活に関わる様々な道具やサービスがケータイに集まっていく平成時代を経験してきましたが、2011年以降の米国では、スマートフォンで同じ事が起きていた、とふりかえることができます。

■歴史は繰り返す

 日本のケータイでの実現から10年ほどのタイムラグを経て、スマートフォンはコミュニケーションやエンターテインメントはもちろんのこと、非接触決済機能や移動手段の確保、健康や医療の情報の管理などを取り込み、ひとり1台を前提として非常にプライベートな情報を、安全に保管するツールになりました。大きな違いは、それを世界規模で同時に推し進めている点でしょう。

 今後、通信に大容量高速化や、端末の更なる高度化、文字・画像・ビデオを超えた新しいメディアを前提としたアプリ、そして機械学習や人工知能を使いこなす手段として、スマートフォンは発展していくことになるでしょう。

 ただし平成の日本のケータイ史をふりかえると、これから世界中のスマートフォンで何が起きるのかが見えてくるのではないか、という仮説はいまだ有効ではないか、と思うのです。(松村太郎)