12年8月中旬に大阪市内のレストランで行われる予定だった、桑名さんの誕生日パーティーにお兄ちゃんを招き、そこでドッキリを仕掛ける予定だった。
桑名さんのパーティーだとは知らせず、普通の企業パーティーだと伝えてお兄ちゃんを出席させ、余興として、さんざん桑名さんのものまねをさせる。そこに、いきなり桑名さんが登場し「お前、誰の許可を得て、ものまねしとんねん!!なめとんのか!!」と怒鳴りつける。お兄ちゃんがあわてふためくところで、ネタばらしをするというストーリーだ。
「『びっくりさせて悪かったなぁ。今日から本人公認やから、たくさんものまねしたってや』と桑名さんがお兄ちゃんを激励するオチがつくはずでした。桑名さんは、パーティーを非常に楽しみにしていました」(桑名さんの友人)
しかし、同年7月に桑名さんが倒れ、計画は暗礁に乗り上げた。前出の共通の知人から連絡を受けたお兄ちゃんは仕事の合間を縫って、桑名さんの入院先に駆け付けた。
「初対面がこんな形だし、会ったこともない人間がいきなり押しかけていいのかと不安で仕方なかった」と気を揉んでいたが、桑名さんからお兄ちゃんの話を聞いていた美勇士らが温かく迎えた。
さらに、美勇士から「オヤジに(ものまねを)見せてあげて」と言われ、病室でものまねも披露した。「病室でしたが、一世一代の舞台だし、本気でやらないと失礼だと思い、ありったけの声を振りしぼりました」(お兄ちゃん)。
看護師がかけつけるほどの声量でものまねをした。すると、ネタを楽しんでいるかのように、桑名さんの心拍数が上昇していったという。対面は数分だったが、印象に残っているのは桑名さんの手の柔らかさ。
「力強いイメージがあったんですが、手は本当に柔らかかった。手を握った瞬間、とてつもない優しさを感じました。実際、僕みたいな芸人にわざわざドッキリまで考えて激励しようとしてくださっていたわけですから…。とにかく桑名さんとしゃべりたかった。できれば、ものまねに『全然似てへんやないか!!』とつっこんでほしかったです」
美勇士は乃羅氏について「もし、おやじが生きていたら『(美勇士、乃羅氏と)一緒に飲みに行くぞ!』と言ったと思う」と語っている。今となっては、確かめようがない話だが、間違いなく、愉快な酒を酌み交わしていたと思う。取材をすればするほど、それを強く確信する。(芸能記者 中西正男)