白鵬は新世代との対戦を楽しんでいるようにも見える。貴景勝との初対戦となった2017年名古屋場所4日目、途中で足が止まった貴景勝に対し、白鵬は土俵上に仁王立ちになり、「かかってこい」とばかりに両手を広げた。そして、ぶつかってきた貴景勝を組み止めて寄り切り、貫禄勝ち。それは、白鵬自身が貴景勝を新たな土俵の主役候補の一人と認め、期待しているからこその振る舞いにも見えた。

 世代交代が近づく土俵で奮戦するのはこの3人だけではない。

 白鵬世代の鶴竜は2018年に初の連覇を果たし、円熟の時を迎えている。稀勢の里は九州場所初日、貴景勝と大熱戦を展開。敗れたうえに膝を痛めて休場に追い込まれ、引退の瀬戸際に立つが、もしもあの相撲で勝っていれば、九州場所は波に乗って復活優勝を遂げていたかもしれない。豪栄道、栃ノ心の30歳代大関コンビも優勝する実力を備え、世代交代を阻止すべく、闘志を燃やしている。

 新世代の北勝富士、豊山、朝乃山、阿武咲らは、ライバルである御嶽海や貴景勝の活躍に刺激を受けている。先に優勝をさらわれた先輩大関・高安の悔しさも相当なものだ。怪物ぶりが鳴りを潜めていた逸ノ城は、年下の貴景勝や阿武咲の活躍で尻に火がつき、「大関を目指す」と公言するようになった。もしも彼らが優勝のかかるような大事な場面で白鵬を倒せば、世代交代の一番となる可能性もふくらむ。

 時代の歯車は動くのか。いつ、誰が動かすのか。2019年の土俵から目が離せない。(文・十枝慶二)