来る2019年は、平成から新しい元号へと移り変わる時代の節目となる年だ。そんな年の土俵で、後世に語り継がれるような世代交代の一番が生まれ、相撲界新時代への扉が開かれるかもしれない。

 しかし、その扉は重く、開くのは容易ではない。御嶽海が制した名古屋場所と、貴景勝が優勝した九州場所は、いずれも3横綱が全休、あるいは途中休場して「横綱不在」だった。逆に、3横綱が皆勤した秋場所では、白鵬が全勝優勝。御嶽海や貴景勝らの世代の力士は目立った活躍ができず、史上初めて三賞ゼロという事態を招いてしまった。春場所と夏場所では鶴竜が連覇を果たしている。稀勢の里も加えた3横綱は、年齢を重ねて休場がちだとはいえ、体調さえ万全なら白鵬世代と新世代との間にはまだまだ力の開きがある。

 とりわけ大きな壁としてたちはだかるのが白鵬だ。主な新世代との対戦成績を見ると、御嶽海に7勝2敗(うち1つは不戦敗)、北勝富士に2勝1敗、貴景勝に3戦全勝、豊山に2戦全勝と圧倒している(朝乃山とは対戦なし)。しかし、そんな白鵬だからこそ、打ち破ったときのインパクトは大きい。過去の実績から見ても、もしも世代交代の一番が生まれるとしたら、一方の主役が白鵬であることは間違いない。

 では、もう一方の主役は誰になるのか。有力な候補は、同世代に先んじて初優勝を遂げた御嶽海と貴景勝だろう。白鵬が全勝優勝した秋場所の御嶽海戦と貴景勝戦は、いずれも印象深いものだった。5日目、貴景勝にタイミング良く左からいなされて大きく泳ぎ、土俵を飛び出しそうになった。しかし、抜群の反応を見せて向き直り、逆転した。9日目では、御嶽海には頭をつけられ、棒立ちの苦しい不利な体勢となった。それでも辛抱を重ね、機を見て足を飛ばして崩し、廻しを切り、投げで崩して出る矢継ぎ早の技で白星をつかんだ。絶対王者を追い詰めた貴景勝や御嶽海の健闘も、白鵬の抜群の対応力や芸術品のような連続技の冴えも光った。

次のページ
時代の歯車を動かすのは