当時は経済界から「個々の企業の問題で政府が介入する必要はない」といった反発もあって、批判を受けた。それでも金融庁の部下に「やれ!」と言って実現させた。会社の幹部が、一部の人間だけで報酬額を密室で決めて、そこに誰も光を当てられない状況はおかしいと思っていたから。

──1億円以上の報酬開示については、誰の提案だったのですか。

 私です。誰からのアドバイスも受けていないよ。官僚に案を話した時は最初びっくりしてたけど、説明すると「たしかにその通りですね」と納得していたね。

──当時の新聞には、記者会見で亀井さんが「公表されちゃ困るというアホな経営者もいるけど、さらされるのが格好悪いのなら、ちゃんと仕事をしろ」と発言したと書かれています。

 そんなこと言ったかもしれんね(笑)。ただ、もっと批判があると思っていたけど、すぐに落ち着いたね。当時は、リーマンショックの影響で世界の大企業のトップが高額報酬をもらっていることに批判が高まっていて、役員報酬開示は時代の流れもあったと思う。

──役員報酬開示の決定から8年以上経過して、ゴーン氏は逮捕されました。金融庁によると、役員報酬の虚偽記載については行政処分も前例にないそうです。逮捕は日本だけではなく、世界に衝撃を与えました。

 これには問題があると思う。

 検察としては、ゴーンさんを「反社会的存在」と捉えたんだろうね。その意味では、「高額報酬を隠していた」というのは“切り口”。人々の共感が得られ、身柄を押さえたら事情聴取で弁護士もつかないし、捜査もやりやすい。いわゆる別件逮捕。検察は、ゴーンさんに“闇”を感じていて、捜査でその全体像の解明を目指しているのではないか。

 しかし、大きな疑惑が明らかにできなかったら「幽霊の正体見たり枯れ尾花」。検察の失態となる。ゴーンさんには優秀な弁護士がたくさんつくだろうからね。法務省の幹部にも電話したよ。「公判は大荒れだな」って。

──現時点では、「闇」と思えるほどの罪状は明らかになっていません。少なく記載した報酬は、会長退任後にコンサルタント契約などをして受け取ろうとしていて、会社の取締役会などで正式に決定したものではないと報じられています。

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ゴーン逮捕は後味が悪い