ロッカールームに引き揚げてきたカスティーヨは「シューズ、ノーグッド(この靴は足に合わない)」と叫ぶなり、履いていたスパイクを脱ぐと、近くにあった大型灰皿の上にポイ捨て。さらに新聞紙を持ってくると、火をつけてスパイクを燃やしてしまったのだ。
エナメルとゴムが焦げる異様な臭気と煙が立ち込め、ロッカールームと通路を挟んだ向かいにある日本テレビの特設スタジオにも流れてきたため、この一件がテレビで放映された。
スパイクは片方の半分が燃えたところで周囲が消し止めたので、大事に至らなかったが、事件を知った小石川消防署から球場に問い合わせがあるなど、騒ぎは飛び火。話に尾ひれがついて、「消防車が来た!」「ボヤになった!」と噂も拡散した。
張本人のカスティーヨは、スパイクに八つ当たりして気分が落ち着くと、「ジャイアンツは予想どおり好調だ。しかし、次はお返しをさせてもらう」と怪気炎を上げたが、別件でスクーター事故を起こすなどの素行不良も祟り、この試合を最後にクビになってしまった。
●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2018」上・下巻(野球文明叢書)。