こうした抗菌薬の過剰な使用や乱用は、抗菌薬が効かない「薬剤耐性菌」を増やすことに繋がります。

 アメリカ疾病予防管理センターのFleming-Dutra氏らによると、2010年から11年にかけて米国における外来患者さんへの抗菌薬処方のうち、約30%は不適切だったと言います。14年に世界保健機関(WHO)は、抗菌薬の耐性は世界の多くの地域で無視できない警戒レベルに達しており、早急に対策を講じなけれは、これまで治療可能だった一般的な感染症や軽傷で命を落としうるという時代へ世界は逆戻りすると指摘しました。

 日本の現状はどうか、というと、抗菌薬はウイルス性の風邪には効かないにもかかわらず、患者から強く求められると処方している診療所が約6割を占めていることが、今年6月、日本化学療法学会と日本感染症学会の合同調査委員会の調べでわかりました。さらに、ウイルス性の風邪と診断した患者やその家族が抗菌薬を希望した場合、12.7%の診療所は希望通り処方し、50.4%の診療所は抗菌薬が不要であることを説明しても納得を得られなければ処方していたのです。

 また、今年の10月末には、風邪で受診した際に本来は効果のない抗菌薬を処方してほしいと考える人が30.1%を占めていたことが、国立国際医療研究センターによる抗菌薬に関するアンケート調査も公表されました。また、「抗菌薬が風邪に有用」と答えた人は49.9%、「インフルエンザに有用」と答えた人は49.2%と、ほぼ半数の人が誤って認識していることが判明したのです。

 さらに、抗菌薬の乱用は、私たちが共存している細菌にも影響を与えることが近年わかってきています。13年、ニューヨーク大学医学部のTrasande医師らは、2歳までの子どもへの抗菌薬の使用とその後の肥満傾向について1万1532人を対象に調べたところ、生後6カ月以内に抗菌薬を処方された子どもは、より肥満傾向にあったと報告しました。また、16年にはジョンズ・ホプキンス・ブルームバーグ公衆衛生大学院のSchwartz医師らが、3~18歳の16万3820人の小児の電子健康記録データを解析した結果、前年の1年間の抗生剤処方や抗生剤処方回数が多いこととBMIの上昇が関連していたと報告しました。

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抗菌薬の副作用