石原さとみ (c)朝日新聞社
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峯田和伸 (c)朝日新聞社
峯田和伸 (c)朝日新聞社
矢部万紀子(やべまきこ)1961年三重県生まれ、横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』
矢部万紀子(やべまきこ)1961年三重県生まれ、横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』

「アヒル口」はもしかして死語だろうかと調べたら、コトバンクにこうあった。

【アヒル口が魅力の峯田和伸】

<アヒルのくちばしのように、唇が前に突出し口角がキュッと上に上がった口元のこと。1990年代に入ってから作られた言葉で、90年代後半に歌手の鈴木亜美が「アヒル口で可愛い」と言われ出して以降、可愛い女性を表現する言葉として使われ始めたとされる。>

 90年代。鈴木亜美。死語ではないが、かなり古い。私自身、この言葉を10年ぶりくらいに思い出した。多分。

 きっかけは、12日に最終回を迎えたドラマ「高嶺の花」(日本テレビ系)。主演の石原さとみ=アヒル口。そういう話と思った方は多いと思う。ブッブー、違います。石原は超セクシーな唇だけど、アヒル口とは違う気がする。

 正解は、峯田和伸。銀杏BOYSのギター兼ボーカルで、近ごろ俳優としての活躍もめざましい人。華道の家元の娘(石原)と出会い、結婚するが式場で逃げられる自転車屋の店主。別れても、お互い忘れられない。そんな役どころの峯田がアヒル口だったのだ。

 峯田といえば、朝ドラの中でも屈指の名作「ひよっこ」の宗男。ヒロインのおじさんだ。インパール作戦の生き残りで、戦場でいろいろあってビートルズの大ファンになり、南海キャンディーズのしずちゃん演じる妻を「体もでかいけど、器もでっけーとこあるのよ」と言うように、マッチョじゃなくて、優しくて……と書き出すと止まらなくなってしまうが、とにかく「女子に効く人」だった。

 宗男にはまり、俳優・峯田を追いかけることにした。6月には公開直後の映画「は抱くもの」を見た。山の中に住む不思議な画家だった。7月スタート「高嶺の花」も当然、毎回鑑賞。すると、まさかのアヒル口。

「ひよっこ」でも「猫は抱くもの」でも、峯田がアヒル口とはまったく思わなかった。なぜ、「高嶺の花」で気づいたのだろうか。

 思考回路をたどるなら、峯田演じる男が「プーさん」と呼ばれていたのが始まりだ。

 頭に浮かんだのは「くまのプーさん」で、ぬいぐるみっぽい感じがするからそういうあだ名なのかなあと思った。役名が風間直人で、「風」から「ぷう」なのだ、としばらくして理解したのだが、とはいえ「あ、峯田さんって、可愛いんだ」と気づいた。

 そもそも「ひよっこ」での峯田は、「変わっているけど真っ当な人」だった。ビートルズかぶれでマッシュルームカット。でも、「本質」みたいなことをしばしば語る。「猫は抱くもの」も、その延長線上の役。アヒル口という目線が、入る余地はなかった。

「高嶺の花」はタイトル通り、「格差」がテーマだ。とんでもなく美貌のお嬢さまが、下々と恋愛する。しかも彼女は天才的な芸術家。わがまま放題な一方で傷つきやすく、怒ったり泣いたり笑ったり、とにかく相手を振り回す。

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だから相手は…