同じく発起人である、誤報検証サイト「GoHOO」を運営する日本報道検証機構代表理事の楊井人文氏と自然言語処理などが専門の東北大学大学院の乾健太郎教授らと協力して、こうしたテクノロジーによるファクトチェックの対象を検出する支援システムを開発するという。

 フェイクニュースそのものはネット以前の新聞やテレビといった旧来メディアでもはびこっていた。だが、現在のフェイクニュースの発生と拡大の背景として見逃せないのがネットとSNSの影響力だ。

 今年3月、ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)を考案し「インターネットの父」と呼ばれるイギリスの計算機科学者ティム・バーナーズ=リー氏は講演でこう訴えた。

「ネットでは広告収入のためにフェイクニュースが広まりやすい。経済的な動機や、ネガティブな噂のほうが拡散しやすいといった人間の性質を見て(ネットのサービスなどの)システムを設計しなければいけないでしょう」

●SNSで情報タコツボ化 少数派意見も増幅

 世界のインターネット利用者数は人口の過半数の約38億人と、情報を媒介するメディアとしての存在は増す一方だ。中でも今やニュースの多くはSNSを経由して拡散される。世界最大のSNSであるFacebookの月間利用者数は20億人を超えた。

「もともと分散型だったネットだが、SNSでは情報は中央集約化されやすく、情報のタコツボ化が起こりやすくなった」とリー氏は警鐘を鳴らす。

 どういうことなのだろうか。ネット分析を手がける東京大学大学院工学系研究科の鳥海不二夫准教授は、こう分析する。
「人はもともと自分の意見に近い、自分にとって都合のいい情報を信じる傾向がある。SNSではそうした情報だけを選択的に取り入れやすくなります」

 これが行き過ぎると、自分の意見とは異なる情報を遮断し反論が目に入らなくなり、ますます自分の意見に固執し先鋭化していく。

 SNSでは情報が事実かどうかにかかわらず、共感を得さえすれば拡散される。こうして意見が近い人たちの間で自分たちにとって都合がいい情報だけが強化されていく「確証バイアス」が起こり、少数派意見であっても増幅され、あたかも多数派意見を形成しているように見えていく。

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