2兆円稼いで法人税500万ってなぜ? ソフトバンクグループ「租税回避」の手口を誰でも分かる徹底解説!

AERA

ソフトバンクグループの「節税」は二つの会計処理の組み合わせだ...

 買収した企業の株をグループ内で移動させることで、法人税を大幅に圧縮する。ソフトバンクグループのそんな手法に、財務省が対策を打ち出した。AERA 2020年2月10日号では、ソフトバンクグループの租税回避の手法や、財務省によるその対策について取材した。

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 政府は2020年度の税制改正大綱に、孫正義会長兼社長が率いるソフトバンクグループ(SBG)を念頭に置いた「租税回避への対応」を盛り込んだ。SBGの営業利益は、18年3月期が1.3兆円、19年3月期が2.3兆円。ところが、法人税は両期とも500万円(SBG単体)しか納めていないのだ。

 いかなる手を使えばそんなことが可能なのか。ソフトバンクが使ったのは、主に二つの会計処理の組み合わせだった。

 一つ目は、「外国子会社配当益金不算入」という制度だ。

 日本企業の海外子会社が現地企業の株から配当を得た場合、その時点で現地の当局から課税される。その配当を日本の親会社が受け取る場合、そこでもう一度課税すると、同じ配当に二重に課税することになるため、日本では税金がほぼかからないようにするという制度だ。

 SBGが使ったのは、16年に約3.3兆円で買収した英半導体設計大手アームホールディングス(HD)だ。この会社は、持ち株会社であるアームHDの下に、事業会社のアームがぶら下がっている形だった。いってみれば、SBGが親、アームHDが子、アームが孫という構図だ。

 SBGは18年3月期、アームHDから配当を受け取った。前出の制度により、この配当は日本ではほぼ非課税となる。この配当は現金ではなく、アームHDが元々持っていたアーム株の4分の3をSBGに差し出す形で支払われた。SBGは税金がほぼかからないまま、大量のアーム株を入手したことになる。

 ここで登場するのが二つ目の処理、「損失計上」だ。

 持ち株会社であるアームHDは自ら事業を行っているわけではなく、その企業価値は保有するアーム株の価値とほぼ等しい。前出のとおりSBGにアーム株の4分の3を差し出したことで、アームHDの企業価値は4分の1になったことになる。仮にSBGが買収した際の約3.3兆円を基準にすれば、約8千億円に下落した計算だ。


 その上で、SBGは価値が下落したアームHDの株を、孫正義氏が設立したソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)に「現物出資」という名目で移した。高く買った株を安く渡せば、損失が出る。こうしてSBGは、一連の株の動きで巨額の損失が出た、というシナリオを完成させた。実際にはアームHDやアームへの影響力は維持したままで、何ら損などしていないのに、だ。

 SBGはこの損失を決算に計上することで巨額の利益を相殺し、法人税を大幅に圧縮した。

 財務省主税局の幹部は一連の株の動きについて「違法ではないが、意図的に赤字をつくり出す巧妙なもの。これだけ利益をあげているのに税金を納めないとなれば国民の理解が得られない」と話す。

 財務省は対策として、「子会社を買った時の簿価の1割を超える配当を出した場合は、その分だけ簿価を下げる」ことを決めた。簿価を下げれば売却しても「損失」を計上できなくなり、前出の手法は使えなくなる。ただ、さかのぼってSBGに適用することはできず、巨額の損失は20年3月期決算にも繰り越され、引き続き法人税圧縮の役割を果たすことになる。

 SBG広報は「アームグループが資本関係を再編し、当社も海外事業の発展に寄与すると判断した。税務申告は税法に従って適正な処理を行った」とし、今回の税制改正については「コメントを控える」と回答した。

 三木義一・青山学院大教授(租税法)は「SBGのような手法が認められると、企業グループを使っての同様な租税回避行為がなされるので、対策は当然だ。企業が活動しやすいよう様々な制度が認められてきたが、それに合わせて新しい租税回避方法もでてくる。いたちごっこのようだ」とみている。(朝日新聞記者・松浦新)

※AERA 2020年2月10日号

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