■日常生活で、思考力や表現力などを磨く

 新タイプの入試には、塾のカリキュラムをこなして知識を蓄積する従来の入試対策では対応できない。教育家の小川大介さんは、親子で時事問題について話し合ったり、記述問題の答えについて「なぜそう考えたのか」を親が問いかけたりと、日常生活や家庭学習のなかで思考力や表現力などを養う必要があるという。一方、塾の活用法について、小川さんは次のように指摘している。

「プレゼンテーションや思考力入試などにはきめ細かな準備が不可欠です。個別指導塾や中小規模の塾のほうが対応しやすいですが、新タイプの入試対策に力を入れる大手の塾も出てくるでしょう」

■「日本一入試方法の多い私立中学校」がめざすこと

 東京都の宝仙学園中学校共学部理数インターは「日本一入試方法の多い学校」を自ら称する。2021年度入試は、帰国生入試を合わせると11種類。いわゆる「新タイプの入試」を多く導入しており、読書プレゼン入試は国語科の教員の提案により採用されたものだ。同校の富士晴英校長は、多彩な入試を実施する意図をこう語る。

「個性と多様性を重視することが目的です。従来の中学入試は塾に通って準備しなければならない現実がありました。小学生にとっては負担が大きく、中学受験を見送る家庭も少なくなかったはず。中学受験はすべての人に開かれるべきだと考えています」

 富士校長は「大切なのは学習歴です」と続ける。これまで学んだこと、スポーツや芸術方面で努力したこと、読書やボランティア活動、生徒会活動などがすべて学習歴となり、評価の対象になる。

■受験生本人の個性が評価の対象になる 

 リベラルアーツ入試やグローバル入試など、プレゼンテーションを行う入試が多い。発表時間を守っているかどうか、声が出ているかどうかが評価対象ではない。富士校長は「判定の仕方にマニュアルはありません」と話す。プレゼンが魅力的か、受験生に将来性を感じるかが基準になるという。実際、持ち時間の5分間を超え、10分以上のプレゼンを行った受験生もいたが、富士校長によると「止める必要がないぐらい、個性を発揮してくれた」そうだ。

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