安浪:なるほど。時々情報がアップデートできていなくて時代遅れになっている個人塾も見かけるので、そこはちょっと心配かな。

■「新型入試」を受けるなら、個人塾の選択肢も

矢萩:小規模塾、個人塾こそいろいろ見たほうがいいと思う。最近増えている「新型入試」を受けるなら、学校のことをよく知っている先生がもし塾にいるなら、大手塾よりいいと思います。

安浪:とはいえ、個人塾で最難関校合格を目指すのは、ほぼ無理じゃないですか? 最難関校は大手塾が威信をかけて対策講座を開講し、練りに練った教材を作っているので、それをひたすらやっている子との差はやはりついてしまいます。

矢萩:個人塾で最難関校に受かる子はたまにいるけれど、そういう子は元々できる子で、何らかの理由で個人塾に引っかかってきた、ということが多いかな。ゼロから鍛えていくのは難しい。もちろん、大手塾から最難関校に合格する子も、元々できる子が大半ですが。

安浪:あとはマンツーマンで教える個別塾ですね。最近は最初から個別塾を選ぶ家庭もあります。最初から個別、というのもちょっと引け腰かな。お稽古ごとを頑張ってるので週2以上通えない、など明確な理由があるならわかるけれど、「集団だとかわいそう」など消極的理由だと成績が上がらない。個別塾だから成績が上がる、というのも幻想です。

矢萩:個別塾は教室長以外、学生が教えているところが多いしね。

安浪:中学受験に足を踏み入れたものの、本気の世界が怖い、ガチでやるのが怖い、って親が思ってしまっていたり。

矢萩:そう。ちょっとビビっている。寿司屋に入るのか、回転寿司に入るのか(笑)。

安浪:逆に、「わが家の目標はこの程度でいいかな?」という気持ちで大手塾に入るのもしんどい。

矢萩:そうすると、塾に丸投げになりがち。親の覚悟は絶対的に必要。勉強教えなくてもいいから、その子のための学びを一緒に本気で探そうよ、っていう。

安浪:そう、子どもが可哀想ですよね。親の関わりすぎもよくないけど、放置も絶対に良くない。適切に関わっている家庭はやっぱり強いです。どの程度が適切なのかは、子どもにも親子関係にもよるけれど、中学受験はそれを常に探っていくことでもありますね。

(構成/教育エディター・江口祐子)

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安浪京子 矢萩邦彦
安浪京子 矢萩邦彦

安浪京子(やすなみ・きょうこ)/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)が好評。最新刊は『中学受験にチャレンジするきみへ 勉強とメンタルW必勝法』(大和書房)。

矢萩邦彦(やはぎ・くにひこ)/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。

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