「今日はパパといっしょ?」と言わないで

――清水アナはシングルファーザー向けのオンラインサロンも主宰していますね。

 サロンを立ち上げてもう6~7年になります。「シングルファーザーが気軽に話せる場所があればいいな」くらいの気持ちで始めました。

 最初の頃は保育園や幼稚園、ママ友さんとの接し方などが話題の中心だったのに、今は「勉強しない」「塾はどうする」「ゲームに制限をかけるべきか」なんて話ばかりしています。これって親も成長している証拠ですよね(笑)。

 新規に入会する方もいます。奥様が亡くなって間がなくて、悲しい日々を過ごしている方ですね。

 そういう人に向けては既存のメンバーが「自分もこういう気持ちだった」「5年たつと、10年たつと、こうなるかもしれないよ」って話してくれます。

 それは悲しみの中にいる人を支えることにもなるし、当時は話せなかった自分の思いをようやく口にできる場にもなっていて、それもまたいい空間だなと感じます。

――父子家庭は母子家庭の10分の1ほどだそうですね。それを実感することはありますか?

 そうですね……たとえばラーメンを息子と2人で食べていると、店長さんが、満面の笑顔で、こう言うんです。

「今日はお父さんと2人かい? いいねえ」って。でも、ぼくたちはいつも2人です。

 店を出るときには「今度はお母さんも連れておいでよ!」って言うんです。それができたら、どんなにいいか。

 わかるんですよ、何も悪気はない。言葉はあたたかいし、優しいんです。でもぼくも息子も傷ついてしまう。こんな場面は、本当によくあることです。

 世の中には母親のいない子もいることを、少なくとも大人たちは気づいてほしいと思って発信しています。

――夫婦で子育てしている人たちに伝えたいことはありますか?

 家の中でグチが言えるって、すごく大事なんです。聞いてくれる相手がいるって、本当に幸せなことです。

 腹が立つこともあると思うんですが、遠慮なくケンカできることもぼくにはうらやましい。もしもこれを読んで、パートナーがいる幸せを感じてもらえたらうれしいですね。

(取材・文/神 素子)

【後編】「どんなに暑くてもグラウンドに行くし、どんなに面倒でも丸付けしちゃう」シングルファーザー清水健さんが語る 父と息子の日常
著者 開く閉じる
神素子
神素子
1 2 3 4