フリーアナウンサー清水健さんは、10歳の男の子を育てるシングルファーザーです。長男の妊娠中に乳がんが見つかった妻・奈緒さんは、「息子と夫と3人で生きる」と決意して妊娠の継続を選びました。無事に出産したものの、ママになって112日目に奈緒さんはこの世を去ることに。「たくさんの後悔がある」と語る清水アナに、10年という時間がくれた変化と、わが子への思いを聞きました。※後編<「どんなに暑くてもグラウンドに行くし、どんなに面倒でも丸付けしちゃう」シングルファーザー清水健さんが語る 父と息子の日常>に続く
【写真】息子を出産した当初の、清水アナと妻 奈緒さんはこちら(全3枚)さびしいままでも、人は幸せになれる
――妻の奈緒さんが他界されて10年がたちます。
10年って「節目」でもなんでもないんですよね。
それでも妻の10回目の命日を迎えて改めて思うのは、息子にとって母親がいないのは当たり前のことで、ぼくにとっても「息子に母親がいない」ことが日常になっているんだ、ということです。
妻が亡くなってからは「2人分がんばらなくちゃ」って、大きな荷物を背負った気持ちでいました。今だってもちろん2人分がんばってはいるんですけれど、背負うっていう悲壮な感じではなくて……「何をどう考えても、たった2人の親子なんだな」って、割り切れるようになった自分がいます。

――10年という月日のなかで、乗り越えてきたということでしょうか。
いえいえ、全然乗り越えてなんていません。ずーっとさびしいです。
ただ、10年という時を経るなかで「悲しさ」が「さびしさ」に変わっていった……という感じですね。
涙を流して悲しんでいた時期は過ぎたけれど、仕事で疲れてもグチを聞いてくれる人はいないし、息子のことですごくうれしいことがあったときにもいっしょに喜びあう人はいない。そんなさびしさは、日々感じています。
それでもね、ぼくは今、幸せなんです。
悲しくてもさびしくても、幸せにはなれるんだと気づかされたのが、この10年でした。
それはぼくが本来望んでいた幸せの形かっていうと、全然ちがうんです。ぼくは10年以上、「あってはいけない現実」の中にいるんですけれど、それでも今のぼくは幸せです。
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