子どもの性被害、「将来に与える影響」を最小限にするために“必要なこと”とは　小児科医が提言

【3. 人間関係への影響】

　被害の経験は、人間関係の構築や維持にも影響を与えます。信頼関係を築くのが難しくなり、職場での人間関係が悪化することがあります。これが職場でのパフォーマンスに影響を及ぼし、昇進やキャリアの発展を妨げる要因となることがあります。

【4. 健康問題への影響】

　性被害を受けた人々は、身体的な健康問題も抱えることが多いです。慢性的な痛みや睡眠障害、食欲不振などの健康問題が、労働能力に影響を与えることがあります。これにより、職場でのパフォーマンスが低下し、結果的に収入が減少することになります。

【5. 経済的ストレス】

　性被害を受けた人々は、経済的なストレスにさらされることが多いです。低収入や失業が続くことで、経済的な不安が増大し、これがさらなる精神的・身体的健康問題を引き起こす悪循環に陥ることがあります。

子どもの将来に与える影響を最小限にするには　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　性被害を受けた子どもたちは、成人後に深刻な経済的不利益を被る可能性が高いことが示されました。特に、家族内での性被害や侵入を伴う性被害は、将来的な収入に対して大きな悪影響を与えます。

　このような結果を踏まえ、以下の提言が考えられます。

　まずは、性被害を受けた子どもたちへの「早期の介入」と「支援の強化」が重要です。これにより、被害の影響を最小限に抑え、将来的な経済的自立を支援することができます。

　次に性被害に関する「教育」と「啓発活動の推進」でしょう。教育と啓発活動を推進し、被害を未然に防ぐための取り組みを強化する必要があります。

　そして何より大事なのは、性被害を受けた子どもたちへの「長期的なフォローアップ」です。性被害を受けた子どもたちに対して、長期的なフォローアップを行い、成人後の経済的自立を支援するためのプログラムを提供することが求められます。

　性被害は個人の人生に深刻な影響を与える重大な問題です。この問題に対して社会全体で取り組むことが、被害者の人生の質を向上させ、社会全体の福祉を向上させることにつながるのです。

（小児科医、新生児科医・ふらいと先生／今西洋介）

著者 開く閉じる

小児科医・新生児科医 今西洋介（ふらいと先生）

小児科医・新生児科医。日本小児科学会専門医／日本周産期・新生児医学会新生児専門医。一般社団法人チャイルドリテラシー協会代表理事。小児公衆衛生学者。医療漫画『コウノドリ』取材協力。富山大学医学部卒業後、都市部と地方の両方のNICU（新生児集中治療室）で新生児医療に従事。Ｘアカウント（@doctor_nw）は2024年3月現在14万フォロワー。