いま「5歳児健診」導入の動きが広がっています。国は費用補助を強化し、2028年度までに全国の自治体での実施を目指しています。現在、1歳半と3歳の乳幼児健診と、小学校入学前の就学時健診が自治体に義務付けられていて、5歳は任意です。しかし、5歳という年齢は、言語能力や認知能力が急速に発達する時期。この時期に健診を行うことで発達や行動上の問題がより見えやすく、早期支援につなげやすくなるといいます。「5歳児健診」の意義や課題について、「ふらいと先生」こと、小児科医・新生児科医の今西洋介医師が解説します。

MENU 来年度から全国的に費用補助がスタート 5歳児健診の受診率 発達障害の早期発見と支援の効果 早期支援の社会的意義 健診の対象と具体的な支援内容 5歳児健診の今後の展望

来年度から全国的に費用補助がスタート

 2025年度から全国的に費用補助が開始され、28年度までに実施率100%を目指すとされる「5歳児健診」。この取り組みは、子どもの発達や行動上の課題を早期に発見し、適切な支援を提供するための重要なステップです。

 さらに、発達の問題を抱える子どもだけでなく、その可能性を指摘された子どもや、日常生活の中で気になる言動が見られる子どもにも対応しやすくなるという大きな意義があります。

 5歳児というタイミングで健診を実施する狙いは、就学前に子どもたちの発達状況を把握しておくことで、学校生活へのスムーズな移行をサポートすることにあります。

5歳児健診の受診率

 国内外の研究では、就学前の時期に発達障害や行動上の問題を発見し、適切な支援を行うことが、後の学習面や社会的スキルの向上に大きく寄与することが示唆されています(#1)。

 また、保護者にとっては、子どもが置かれている状況を早期に知ることで、不安や戸惑いを軽減し、周囲のサポートや専門的なサービスにつながる第一歩となるでしょう。

 地域や学校での支援体制が充実し、家庭内だけでは対応が難しい場面においても、積極的にアプローチができるようになるのです。

 そういった意味では、日本では、小児健康診断は公衆衛生システムの重要な部分となることは明白ですが、健診の年齢によって参加率が異なります。

 ある報告によれば、1歳半健診は97.4%、3歳児健診は96.0%、6歳からの学齢期健診はほぼ100%の受診率を誇ります(#2)。

 この高い受診率は、確立された組織的な提供、高い国民の認知度、そして無料のアクセスに起因しています。

次のページへ早期発見と支援の効果とは
著者 開く閉じる
今西洋介(ふらいと先生)
小児科医・新生児科医 今西洋介(ふらいと先生)

小児科医・新生児科医。日本小児科学会専門医/日本周産期・新生児医学会新生児専門医。一般社団法人チャイルドリテラシー協会代表理事。小児公衆衛生学者。医療漫画『コウノドリ』取材協力。富山大学医学部卒業後、都市部と地方の両方のNICU(新生児集中治療室)で新生児医療に従事。Xアカウント(@doctor_nw)は2024年3月現在14万フォロワー。

1 2 3 4