子どもの性被害のニュースが、あとを絶ちません。幼いころに受けた性被害は、将来にどんな影響を与えるのでしょうか。海外の研究では、将来の収入の低下を招くというデータもあるといいます。子どもへの影響を最小限にするには、どんなことが必要なのでしょう。「ふらいと先生」こと、小児科医・新生児科医の今西洋介医師が解説します。
【図】子どもが性被害に遭いやすい「危険な場所」リストはこちら性被害は子どもの将来にどんな影響を与えるのか?
子どもに接する仕事に就く人に性犯罪歴がないかを確認する「日本版DBS」を導入するための法律、「こども性暴力防止法」が、6月19日に成立しました。
DBSとはDisclosure and Barring Serviceの頭文字をとったイギリスの制度で、個人の犯罪履歴などのデータベースを管理し、子どもに関連する仕事に就く際に必要な証明書を発行します。こども性暴力防止法は、イギリスを参考にして作られた日本独自の制度です。
初犯を防げない点、義務化の対象になっているのは保育園や学校のみで、塾や学童保育などは義務化でなく認定制である点などまだ制度としては不十分ですが、この小児性加害の分野は日本の法制度としては未開の地であり、この日本版DBSの成立は大きな一歩といえるでしょう。
性被害を受けた子どもにはどのような影響があるのでしょうか? 医学的な影響はさまざまな研究で報告がなされていますが、小児性被害者が受ける社会的影響は、いま多くの研究で注目されている分野です。
性被害を受けた子どもたちが成長して成人したとき、彼らの収入にどのような影響があるのかについて、多くの研究が行われています。特に最近の研究は、性被害が将来的な収入に与える深刻な影響を明らかにしています。
この研究に基づいて、性被害を受けた子どもたちの将来的な収入への影響について、わかりやすく解説します。
性被害の定義とは
性被害とは、「子どもに対して行われる望まない性的行為」を指します。これには、直接的な接触を伴うもの(例えば、触れる、抱きしめる、性的暴行)や非接触のもの(例えば、露出、性的な映像の見せつけ)が含まれます。
性被害は世界中で発生しており、その影響は被害者の人生にわたって続きます。カナダで行われた最近の研究では、子どものころに性被害を受けた人々が成人した後の収入について調査しました。
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