少子化に歯止めがかかりません。2024年1~6月の出生数は約35万人と、上半期で過去最少でした。国も、出産や育児にかかる費用の補助や無償化などを検討しています。そんななか、小池百合子東京都知事が「無痛分娩」も新たに助成すると動き出しています。無痛分娩は安全なのでしょうか。そのメリット、デメリットについて、「ふらいと先生」こと、小児科医・新生児科医の今西洋介医師が最新の研究結果をもとに解説します。

MENU 変わりつつある日本の出産事情 無痛分娩のメリットとは 無痛分娩の懸念点とその解釈 「無痛分娩は自閉症を増やす」は現時点でウソ 自分に合った選択をすることが大切

変わりつつある日本の出産事情

 2024年6月、東京都の小池百合子知事が、7月の都知事選に向け医療保険の対象外である「無痛分娩」に助成金を出すとした公約が話題になりました。子どもを産む人を増やすために、出産の痛みへの心配を減らそうというわけです。

 その後当選し、3期目の都政をスタートさせた小池知事は、公約の実現に向け動き出しているようです。これが実現すれば、日本のお産の風景が大きく変わるかもしれません。

 欧米では当たり前となったといえる無痛分娩ですが、日本では総分娩数に占める無痛分娩数の割合が11・6%(2023年、日本産婦人科医会調べ)と、まだあまり広まっていません。しかし、最近では徐々に選択する人が増えています。

 ただ、無痛分娩には賛成の人もいれば反対の人もいます。安全なのか、赤ちゃんへの影響はないのか、皆さんもいろいろな意見を聞いたことがあると思います。ここでは、最近の研究結果を見ながら、無痛分娩のメリットとデメリットについて考えていきましょう。

無痛分娩のメリットとは

 無痛分娩の一番の良いところは、当然ですが「痛くないこと」です。痛みが少なければ、出産への怖さも減りますし、リラックスしてお産に臨めます。痛みが少ないことで、お母さんの体への負担も減ります。これは後々のお母さんの健康にもいい影響があるかもしれません。

 興味深いことに、無痛分娩は生まれてくる赤ちゃんにとってもいいかもしれないという研究結果もあるのです。

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今西洋介(ふらいと先生)
小児科医・新生児科医 今西洋介(ふらいと先生)

小児科医・新生児科医。日本小児科学会専門医/日本周産期・新生児医学会新生児専門医。一般社団法人チャイルドリテラシー協会代表理事。小児公衆衛生学者。医療漫画『コウノドリ』取材協力。富山大学医学部卒業後、都市部と地方の両方のNICU(新生児集中治療室)で新生児医療に従事。Xアカウント(@doctor_nw)は2024年3月現在14万フォロワー。

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