この研究は、カナダ・ケベック州の幼稚園児を対象とした長期的な追跡調査に基づいており、性被害が将来的な収入にどのように影響するかを明らかにしています。
性被害を受けた経験と、成人後の収入の関係
この研究では、3020人の参加者を対象に、性被害の有無とその詳細(加害者の身元、被害の深刻さ、被害の継続性)を調査しました。そして、これらの情報をカナダ政府の税務データとリンクさせることで、成人後の収入に関するデータを得ました。
研究の結果、性被害を受けた人々は受けていない人々に比べて、下記のように年間収入が低いことがわかりました。
・性被害を自己申告した人々は、33歳から37歳の間の年収が平均で4,031米ドル(約58万円、8/28時点。以下同)少なかった。
・公式に報告された性被害を受けた人々は、年収が平均で16,042米ドル(約233万円)少なかった。
さらに、性被害の種類や深刻さによっても収入に差が見られました。
・家族内での性被害を受けた人々は、家族外で被害を受けた人々よりも年収が4,696米ドル(約68万円)少なかった。
・侵入(性的暴行)を受けた人々は、非接触の性被害を受けた人々よりも年収が6,188米ドル(約89万円)少なかった。
なぜ将来的な収入に影響を与えるのか
性被害が将来的な収入に与える影響は、いくつかのメカニズムを通じて説明することができます。以下にその主なメカニズムを示します。
【1. 教育への影響】
性被害を受けた子どもたちは、学業成績が低下する傾向があります。トラウマやストレスが集中力や学習意欲に悪影響を及ぼし、学校生活に適応できないことが多いです。その結果、高校卒業や大学進学の機会が減少し、将来的な職業選択の幅が狭まることになります。
【2. 精神的健康への影響】
性被害を受けた子どもたちは、成人後にうつ病や不安障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などの精神的健康問題を抱えるリスクが高まります。これらの精神的健康問題は、安定した職業生活を維持する能力に悪影響を与え、長期的な失業や低収入につながる可能性があります。
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