小川 突然のことで、うろたえてしまいましたよね。まず、いただいたお子さんについての情報を分析すると、「身体感覚」と「視覚」をよく使うタイプではないかと思われます。そして、相談者である相談者さんは「聴覚」をよく使って手順やルールに沿って考えるタイプのようですので、娘さんの様子に対して不完全さや抜けを感じることがあるのではないかと推測します。

 さて、お悩みを考える前に、「思春期」のメカニズムを復習しておきましょう。世間では、「思春期だからしかたない」「この時期の子は扱いづらい」といった大人側の都合によるネガティブな情報が多いですよね。でもそのとらえ方は考え直したほうがいいかもしれません。

 人間はほかの哺乳類に比べて、生まれてから立つまでにすごく時間がかかります。それは、最初の数年間は脳を最大化させることに成長エネルギーの大部分を使い、体の成長を後回しにするためです。5〜6歳で脳の成長が落ち着き、7〜8歳から体の成長に切り替わり、今度は体のほう急速に育っていきます。身長が伸び、第二次性徴によって体つきが変わっていく。その時、先に成長した脳が体の急成長を確認するため、脳が違和感を覚えるわけです。

 子ども側は、身長が伸びて視点が高くなることで空間の感じ方が変わったり、自分を守ってくれた大人たちが思春期の自分との距離感をつかめなくなっている様子が子どもからするとぞんざいに扱われている気がしたりと、さまざまな変化が起こります。そこで不安感や説明がつかない気持ちがワーッと渦巻いて、怒り、八つ当たり、あるいは甘えるという行動のブレが出てくるのです。ですから、体の成長が一段落すれば、ブレも落ち着いてきます。

 娘さんは自己内対話をいっぱいしてますね。自分の脳が体の成長に戸惑っていることを「わかってるけど、どうしていいかわかんない」と言語化して親に報告までして、さらに自分をコントロールしようと頑張っている。そんなことなかなかできません、天才ですよ。しっかり考えることができて自己管理能力も高いから、そりゃあ苦しいと思います。自分の脳が毎日「私の体、どうなっちゃってるの!?」と確認しているんですから。

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