睡眠不足が原因なのに「発達障害」と診断されることも
また、現在、小学生の約10%が発達障害の疑いがあるとされています。実はこの発達障害の症状と睡眠不足の症状はよく似ているのです。睡眠不足が原因なのに、「発達障害」と診断されているケースも一定数あると考えられています。
――発達障害と睡眠不足の見分け方はあるのでしょうか。
見分けるのは専門家でも難しいです。ADHD(注意欠如・多動症)の不注意や多動、衝動性といった特徴は、睡眠不足によって生じる認知能力の低下や情緒の不安定さとよく似ています。さらに、発達障害の子どもには、睡眠と覚醒を調節する中枢神経系の機能不全の可能性などから、慢性的な睡眠不足の子も多く、発達障害と睡眠不足の両方の症状が重なっている、というケースもあるのです。
ただし、発達障害の場合も、睡眠不足を解消することで発達障害による諸症状に改善がみられることがよくあります。アスペルガー症候群の「就寝前にルーティンをこなさなければ眠れない」などのこだわりの強い一面も、十分な睡眠の確保によって和らぐケースがあります。つまり、睡眠不足か発達障害か判断が難しい場合でも、十分な睡眠をとることができれば、その症状の緩和が期待できるのです。
――幼少期の睡眠不足が招く、将来のリスクは?
子どもが睡眠不足の状態がずっと続けば、将来的に精神疾患の発症リスク、将来の肥満や生活習慣病、うつ、自殺リスクなどにも関わってきます。子ども時代の慢性的な睡眠不足が大人になった後にも大きな影響を与えてしまうのです。
――子どもの睡眠不足を改善するポイントを教えてください。
睡眠リズムを整えるためには、毎朝、同じ時間に起きることが大切です。前日の夜、多少、夜ふかしをした日でも、翌朝、いつもと同じ時間に起きることが重要なのです。
(取材・文/石川美香子)