――中学受験の塾などで、遅くまで勉強する子どもたちもいます。

 塾では、遅い時間でも子どもたちの集中力が増すように、室内をとても明るくして脳を「覚醒状態」にさせています。塾にとっては、子どもたちの最大限の力を出せるように、ということだと思いますが、こと睡眠に関しては、良い影響はないと考えられます。

――睡眠不足の子どもにはどんな症状がみられますか。

 まず、「朝起きられない」「昼間に眠い」というのが多いです。さらに、キレやすさやイライラなどの情緒的な不安定さや疲れやすさ、ほかにも認知能力や学習能力の低下、抑うつ傾向なども出てきます。免疫力が低下するため、風邪をひきやすかったり、子どもでも高血圧や糖尿病などの生活習慣病がみられたりすることもあります。

――子どもの成長や生活にも大きく影響しそうです。

 小学生に必要な睡眠時間は9~12時間です。9時間以上の睡眠が子どもの心身の疲労回復や成長には欠かせません。それなのに、ゲームに熱中して、あるいは受験勉強などによって、慢性的に夜ふかしすることによって体内時計が狂ってしまい、睡眠リズムも崩れてしまうと、朝起きられずに学校を遅刻したり、そこから不登校やひきこもりなどにもつながったりします。

 また、睡眠は、からだの発達を促す「成長ホルモン」の分泌に関わっています。そのため、成長期に十分な睡眠が足りていないと、身長の伸びが悪かったり、記憶に関与している脳の「海馬(かいば)」の成長が不十分になったり、という問題が生じます。海馬は成長期にどれだけ睡眠をとれたかで大きさが変わってきます。

 海馬の大きさは記憶容量や学習能力などに影響しますので、本当に頭の良い子に育てたいのなら、夜遅くまで塾や自宅で勉強するより、早めに寝かせて、十分に睡眠をとらせることが実は大切なのです。

NEXT発達障害との関係
1 2 3