子どもの成長や心身の健康にとって欠かせない睡眠。良質な睡眠には、「朝食」が大きく影響するといいます。睡眠の専門医で、日本睡眠学会と日本睡眠協会の理事長を務める久留米大学学長の内村直尚先生に、子どもの睡眠と朝食の関係についてお話を聞きました。
【図】子どもの良い睡眠を誘うための6つのポイントはこちらなぜ「朝ごはん」が夜の睡眠に関係するのか
――夜の睡眠に朝食が影響するということですが、なぜ、朝のごはんが夜の睡眠と関係があるのでしょうか。
これは子どもに限らず、全年齢共通なのですが、自然な夜の睡眠のためには、睡眠リズムを整えること、つまり、規則正しい生活習慣が大切になります。とくに、“朝の過ごし方”が重要で、その基本となるのは、「毎朝一定の時間に起きること」「朝の光を浴びること」「朝食を食べること」の三つです。
睡眠リズムは体内時計によって作られますが、子どもは大人と比べて体内時計が未熟で、「前日、いつもより少し遅く寝た」などのちょっとした外的要因によって、体内時計がすぐに狂ってしまいます。朝に明るい光を浴びると体内時計がリセットされ体が目覚める、というのは有名な話ですが、この「朝の光」の次にリセットする効果が高いのが「朝食」なのです。
良い眠りにおすすめの朝食メニューは?
――なるほど。朝食は、何を食べてもいいのですか?
まず何でもいいから食べる、ということが大切ですが、朝食におすすめの食品としては、気分の高揚や意欲の向上に関わるホルモン「セロトニン」の原料になる栄養素「トリプトファン」を含む食品です。トリプトファンは、たんぱく質を構成するアミノ酸の一つですが、体内では生成できないので、食事でとるしかありません。
トリプトファンは卵、牛乳、納豆、バナナ、焼き魚、ハム、ツナなどに多く含まれています。これらの食品を朝食メニューに積極的にとり入れるといいでしょう。朝、摂取したトリプトファンは日中、セロトニンに変化し、夜になると眠気をもたらす睡眠ホルモン「メラトニン」をつくり出します。
ただし、食事はバランスも大切です。あまり特定の食品に偏ることなく、栄養バランスを考えた食事を心がけるようにしましょう。あと、「早食い」は眠りを妨げるというデータもあるので、できるだけよくかんでゆっくり食べましょう。
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