(写真/ソニー・ミュージックソリューションズ提供)
(写真/ソニー・ミュージックソリューションズ提供)

■独自の音楽ぶちかます

──1980年にデビュー。「アンジェリーナ」「ガラスのジェネレーション」などで一気にロックスターへと駆け上る。かつて自身のアイデンティティーについて、「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」(89年)あたりで確立されたと語っていた。

佐野:言葉とメロディー、ビート。この三つの要素の境目がなく一体化した表現。これを独自なスタイルでみなさんに楽しんでいただく。ここが僕のミュージシャンとしての、ソングライターとしての、ロッカーとしてのアイデンティティーだと思います。ただ、ファンのみんなが喜んでくれる曲、サウンド、パフォーマンスを届けるのが一番。自分がどんなにすごいことをやっても、芸術的なことをやっても、アバンギャルドで格好いいことをやっても、その価値を見いだしてくれない限り、一方通行になってしまう。

 最初の3作くらいは、僕からのプレゼンテーションのようなものもあった。ただ、商業的にヒットしたというのは僕にとってうれしいことで、多くのファンの人たちが注目してくれました。これはチャンスだと思って、僕の独自の音楽をぶちかまそうとして作ったのが、ニューヨークで制作した「VISITORS」(84年)。それから先の「Cafe Bohemia」(86年)、「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」と続きます。

■未来で見た景色を曲に

──昨年はニューアルバムを発売予定だったが、計画は変更。次に出るアルバムには、どんな時代性が反映されるのだろうか。

佐野:それは正直言って、わからない。いつも自分が思うことは、無心で作った作品に時代が後からついてくる。これを繰り返しています。ですので、「今のこの時代に僕はこういうことをメッセージしたいんだ」ということではないんですね。不思議だけども、僕が過去に作った曲に沿って時代が後から来るというか。それは僕が普通じゃないからだと思う(笑)。良い意味でも悪い意味でも。タイムマシンに乗って未来に行って、その未来で見た景色を今の時代に戻ってきて、未来で見たスケッチを曲にする。ちょっとサイエンスフィクションみたいだけど。

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最高のメッセージを…