羽後交通横荘線で客車に変身した旧都電1032。訪問時の終着駅である館合構内に休むホハフ6。塗色は羽後交通色になっていたが、昔ながらのツートンカラーがよく似合った。(撮影/諸河久:1966年3月6日)
羽後交通横荘線で客車に変身した旧都電1032。訪問時の終着駅である館合構内に休むホハフ6。塗色は羽後交通色になっていたが、昔ながらのツートンカラーがよく似合った。(撮影/諸河久:1966年3月6日)

 ちなみに、都電が売却された羽後交通横荘線は、秋田県の横手~老方38200mを結ぶ軌間1067mmの非電化地方鉄道。筆者の訪問時には横手~館合18900mを結んでいた。

 最後のカットがホハフ6の車内。夜来の吹雪が旧都電の薄っぺらな側窓の隙間を貫き、座席の上にも残雪が見られた。運転台の主要機器は撤去されたが、座席や天井の白熱灯照明器具などは都電時代のままだった。

 このホハフ6は横荘線が全廃された1971年7月まで稼働し、地域の足として立派に再起を果たしていた。

夜来の雪が吹き込んで、座席や床に積雪したホハフ6の車内。主要機器を撤去した運転台は、左端の手用ブレーキスペースを除いて立席に転用されていた。館合駅(撮影/諸河久:1966年3月6日)
夜来の雪が吹き込んで、座席や床に積雪したホハフ6の車内。主要機器を撤去した運転台は、左端の手用ブレーキスペースを除いて立席に転用されていた。館合駅(撮影/諸河久:1966年3月6日)


■撮影:1981年8月2日

◯諸河 久(もろかわ・ひさし)
1947年生まれ。東京都出身。写真家。日本大学経済学部、東京写真専門学院(現・東京ビジュアルアーツ)卒業。鉄道雑誌のスタッフを経てフリーカメラマンに。著書に「都電の消えた街」(大正出版)、「モノクロームの私鉄原風景」(交通新聞社)など。2019年11月に「モノクロームの軽便鉄道」をイカロス出版から上梓した。

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諸河久

諸河久

諸河 久(もろかわ・ひさし)/1947年生まれ。東京都出身。カメラマン。日本大学経済学部、東京写真専門学院(現・東京ビジュアルアーツ)卒業。鉄道雑誌のスタッフを経てフリーカメラマンに。「諸河 久フォト・オフィス」を主宰。公益社団法人「日本写真家協会」会員、「桜門鉄遊会」代表幹事。著書に「オリエント・エクスプレス」(保育社)、「都電の消えた街」(大正出版)「モノクロームの東京都電」(イカロス出版)など。「AERA dot.」での連載のなかから筆者が厳選して1冊にまとめた書籍路面電車がみつめた50年 写真で振り返る東京風情(天夢人)が絶賛発売中。

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