鹿児島市立南方小の親子読書の日の用紙。親のコメント欄もあるが、作文を書く学校という伝統が根付いているため、さほど不満の声も上がらない(鹿児島市立南方小学校提供)
鹿児島市立南方小の親子読書の日の用紙。親のコメント欄もあるが、作文を書く学校という伝統が根付いているため、さほど不満の声も上がらない(鹿児島市立南方小学校提供)

 夏休みの宿題の代表格“読書感想文”。学校側からさほど指導もなく、家庭に丸投げされ頭を抱えた親も少なくないだろう。そんな厄介な存在である読書感想文の意義や向き合い方を探った。AERA 2023年7月24日号の記事を紹介する。

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 読書感想文の目的が読書の習慣づけだとするならば、読むだけではダメなのか。6月に実施した本誌のウェブアンケートにもこうした趣旨の書き込みが見られた。中には、文章作成について、今年は「私(母親)の代わりにChatGPTに子どもと対話させながらまとめる作業をしようかと思っている」という保護者もいたほどだ。

 国語教育に詳しい東京学芸大学の中村和弘教授はこう話す。

「何度も読んでいる本だとしても、書くことによって、新しい読み方との出合いがある可能性があります」

 読むだけでは「面白かった」で終わる場合も、感想を文章化する工程で、なぜ自分がその本を面白いと思ったのかや、感動を覚えたのか、じっくり考えることが必要になるため、思考を働かせるよい機会になると中村教授は話す。

 コンクールの審査対象作とはならないものの、いくつかの本を読み比べて感想を書くことも思考力を磨くには良いと話す。

「読書感想文はもっと自由でいいと思います。野球の好きな子が野球についての本を読む場合、大谷翔平選手の本と、歴代のヒーロー選手の本を読み比べて感じたことを書くなどすると、本の世界に親しんだり、本の面白さに気づくことにつながるのでは」(中村教授)

■学校側のリードが必要

 一方で、ある程度学校側のリードが必要ではないか、とも。そもそも読書感想文は読書をし、自分の考えを文章にまとめる複合型のプロジェクト。どういう手順を踏んで書くのかのレクチャーがないままで、家庭で担うのは難しいと指摘する。

「できれば、学校で基本を教わった上で夏休みに入れるといいです。1年間の国語の学習の中には必ず読書の単元がありますから、学校での指導は不可能ではありません。その学校がどんな目的で読書感想文の宿題を出すのかを保護者と共有できると、保護者側もどう手助けしたらいいかが分かり、スムーズに進められるのではないでしょうか」(同)

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