中高生らが数学の力を競う「国際数学オリンピック」が20年ぶりに日本で開催される。AI社会が到来し、数学人材に熱い視線が注がれる中、未来を担う600人超の若者が競い合う。AERA 2023年7月3日号の記事を紹介する。
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野球のWBCは盛り上がった。そして7月にもうひとつの国際大会が日本で開催される。高校生以下が参加する「国際数学オリンピック」である。
「日本で開催されるのは20年ぶり。参加国数は114カ国・地域と、過去最多です」
と、数学オリンピック財団理事長の藤田岳彦さん(68、中央大学理工学部教授)。
大会は7月7日に千葉・幕張メッセで開幕する。1カ国6人の代表選手たちが翌日から2日間にわたり、連日、数学の難題3問ずつを各4時間半で解いていく。出題される問題は世界中の参加国から候補問題が送られてきて、最終的に各国の団長らの投票で決まる。採点も自国選手が有利にならないように複数の採点者が担当し、議論も盛んに行われるという。
成績優秀者には金、銀、銅のメダルが授与される。ただし、たとえば金メダルなら「12分の1の成績上位者」などのように、複数の選手に贈られる。
「問題のレベルは、大学入試の難問を富士山だとすると数学オリンピックの問題はエベレスト級です」(藤田さん)
そもそもこの数学オリンピックは1959年に東欧のルーマニアで始まった。
「数学オリンピックが始まる前、ソ連にアンドレイ・コルモゴロフという有名な数学者がいて、初等中等課程の数学教育に力を入れた雑誌を創刊しました。その流れを受けて数学オリンピックを作ろうという機運が高まり、当初はソ連・東欧だけで実施されていたのですが、数学は世界共通の財産だということで、西側諸国もだんだんと参加するようになりました」(同)
日本は資金面の点から参加が遅れたが、篤志家の寄付により、先進国としては最後に、90年の北京大会から参加している。