編集工学研究所チーフエディター 仁禮洋子さん(写真:本人提供)
編集工学研究所チーフエディター 仁禮洋子さん(写真:本人提供)

■科学の楽しさに目覚める本、「ワクワク」を3段階で紹介

○編集工学研究所チーフエディター・仁禮(にれ)洋子さん

 本棚空間のプロデュースや選書を手掛ける編集工学研究所で、6万冊に囲まれて仕事をしています。理化学研究所(理研)とタッグを組んだ「科学道100冊」プロジェクトでは企画制作を担当。今回は科学になじみのない人でもワクワクできる本を、ホップ・ステップ・ジャンプの3段階で紹介します。

 ホップは大人もハッとさせられる科学絵本です。『ぼくのニセモノをつくるには』は、自分の分身ロボットをつくろうと考えた小学生の話。「情報としての自分」の複雑さに気がつきます。『人間』は科学絵本の巨匠・加古里子さんが17年の構想を経て描いた大作。自分は150億年前の宇宙誕生と繋がった存在なのだと感動します。『ダーウィンの「種の起源」』は、進化論を絵本で学べる貴重な一冊。

 ステップは何時間でも見ていられる図鑑5冊です。『アンダーアース・アンダーウォーター』は地下と深海のイラストで「知らない地球」に出合えます。『世界のふしぎ断面図鑑』は宇宙ステーションなど巨大な建物の構造を図解する本で、メカ好きでなくてもそそられます。『美しい電子顕微鏡写真と構造図で見るウイルス図鑑101』を読めばウイルスのイメージが一変するはず。『世界で一番美しい元素図鑑』や『ビジュアル図鑑 自然がつくる不思議なパターン』は想像を超える「自然のカタチ」に出合えます。

 ジャンプは時代を超えて読み継がれる名著2冊。『COSMOS』は理研の科学者から多くの推薦を得た本。1千億個もの銀河がある宇宙で地球という星の奇跡を感じ、心が震えます。『春宵十話』は明治生まれの天才的数学者・岡潔が「人の中心は情緒である」と説く随筆集。花を美しいと感じるように数学の美しさにじんわり感じ入ります。

(構成/編集部・渡辺豪)

AERA 2023年5月ー8日号より
AERA 2023年5月ー8日号より

■なじみなくても大丈夫

○想像を超える「自然のカタチ」

『ビジュアル図鑑 自然がつくる不思議なパターン』/フィリップ・ボール著、ナショナル ジオグラフィック編集、桃井緑美子訳/日経ナショナル ジオグラフィック社

○地下と深海イラストで「知らない地球」

『アンダーアース・アンダーウォーター:地中・水中図絵』/アレクサンドラ・ミジェリンスカ、ダニエル・ミジェリンスキ他/徳間書店

『ぼくのニセモノをつくるには』/ヨシタケシンスケ/ブロンズ新社

『人間』/加古里子/福音館書店

『ダーウィンの「種の起源」─はじめての進化論』/サビーナ・ラデヴァ作・絵、福岡伸一訳/岩波書店

『世界のふしぎ断面図鑑(輪切り図鑑クロスセクション4)』/リチャード・プラット著、スティーブン・ビースティー画、宮坂宏美訳/あすなろ書房

『美しい電子顕微鏡写真と構造図で見るウイルス図鑑101』/マリリン・J・ルーシンク著、布施晃監修、北川玲訳/創元社

『世界で一番美しい元素図鑑』/セオドア・グレイ著、ニック・マン写真、若林文高監修、武井摩利訳/創元社

『COSMOS』(上)(下)カール・セーガン著、木村繁訳/朝日新聞出版

『春宵十話』/岡潔/角川ソフィア文庫

AERA 2023年5月1-8日合併号