放送作家 鈴木おさむさん(写真:本人提供)
放送作家 鈴木おさむさん(写真:本人提供)

 いつもよりゆっくり過ごせるゴールデンウィーク。時間を気にせず、本の世界にじっくり浸ってみてはいかがだろう。識者が「科学の楽しさに目覚める本」「今オススメの漫画」を教えてくれた。AERA 2023年5月1-8日合併号の記事を紹介する。

【鈴木おさむさんオススメの漫画はこちら】

*  *  *

■今オススメの漫画、上手に気持ちをコントロール

○放送作家・鈴木おさむさん

 最近読んだ漫画で面白かったのは『私の息子が異世界転生したっぽい』です。17歳の息子を交通事故で亡くした母親が、高校時代の同級生であるオタクの男性に「異世界に転生した息子に会う方法」を相談するところから始まるのですが、決して暗くはありません。息子を求める母親に、ゆっくりゆっくり光がさしていき、オタクの男性との関係にも変化が起きる。読後は、「自分もがんばろう」と思うことができました。

 僕らの日常には、いろんな悲しみがあふれています。子育てで悩んだり、仕事で嫌なことがあったり。それでも毎日「おはよう」と言って、ご飯を食べている。日々そこにある当たり前の幸せに気づかせてくれる作品だと思います。

『ティラノ部長』は、僕が原作の漫画です。普段あまり自分の作品の宣伝はしないのですが、50代前後のAERA読者には是非おすすめしたいです。バブル世代で会社のためにバリバリ働いてきたけれど、だんだん周囲から疎まれるようになりプライベートでも悩みを抱え始める。そんな中年のサラリーマンの悲哀をコミカルに描いています。

 主人公はティラノサウルスである必然性がありました。息子が大好きな恐竜ショーでは、子どもたちはみんな草食のトリケラトプスを応援するんです。強いのに嫌われているティラノサウルスに、バブル世代が重なり、キャラクターが完成しました。

 僕は、漫画や本、映画を選ぶ時、今日という日をどんな一日に仕上げたいか、を常に考えるようにしています。晴れて気持ちの良い連休には、抜け感のある感動モノがいいんじゃないでしょうか。上手に選んで、その日の気持ちをコントロールしてほしいと思います。

(構成/編集部・古田真梨子)

AERA 2023年5月ー8日号より
AERA 2023年5月ー8日号より

■今日をどんな日に

○日々そこにある当たり前の幸せ

『私の息子が異世界転生したっぽい』/かねもと/KADOKAWA

サラリーマンの悲哀、コミカルに描く

『ティラノ部長』/鈴木おさむ、したら領/マガジンハウス

『BLUE GIANT』/石塚真一/小学館

○71巻以降が特におすすめ

『ONE PIECE』/尾田栄一郎/集英社

『かくかくしかじか』/東村アキコ/集英社

『ブルーロック』/金城宗幸、ノ村優介/講談社

『日本三國』/松木いっか/小学館

『カラオケ行こ!』/和山やま/KADOKAWA

『トリリオンゲーム』/稲垣理一郎、池上遼一/小学館

『愛の掛け惨』/原案脚本:鈴木おさむ 制作:SORAJIMA

次のページ