多様な性自認やジェンダーへの配慮から、制服の選択肢を増やす学校が増えている。これからの制服制度がどうあるべきか、改めて議論が必要なときだろう。AERA 2023年4月10日号の記事を紹介する。
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男女別の学校制服の歴史は長い。制服制度に詳しい関西学院大学の桜井智恵子教授(教育社会学)によると、学校制服は「富国強兵」に邁進する明治期に生まれ、性別役割分業を象徴するアイテムでもあったという。
「明治期に入り、軍服をベースに士官学校や師範学校で洋装の制服が用いられるようになりました。女性用の洋装の制服が生まれたのは40年ほど後ですが、男性を支える『良妻賢母』として女性らしさを強調したデザインが用いられました。性別役割を強調した男女別の制服が現在まで続いているのです」
戦後になり、そして平成の時代に入っても学校現場で男女の区別は色濃く残った。1990年までは技術科と家庭科が男女別学で学ばれた。それ以降も、「男女で分けた管理方法を変えると現場が混乱する」と考える教員が多かった。
■4年間で4倍以上に
しかし2010年代以降、ジェンダー平等や多様性への配慮は当然に求められるようになりつつある。制服大手のトンボによると、同社の学生服を採用する全国の中学校・高校のうち、女子制服にスラックスを導入している学校は2018年には370校だったが21年に1千校を超え、22年には1500校超に増えた。最近では、制服のモデルチェンジを検討する学校の9割以上が要望事項に「多様性に配慮した制服」を挙げるという。
女子スラックスの導入を足掛かりに、「スラックス/スカートやネクタイ/リボンの自由選択」「キュロットなど『第三の制服』導入」などへと取り組みを進める例も多い。
■見直し求める声も
こうした取り組みは一般に「ジェンダーレス制服」と呼ばれるが、必ずしもセクシュアルマイノリティーだけを対象にしたものではない。トンボの担当者はこう話す。