EV専門店「メルセデスEQ横浜」にはメルセデスのEVが全車種展示されている=横浜市神奈川区(撮影/安井孝之)
EV専門店「メルセデスEQ横浜」にはメルセデスのEVが全車種展示されている=横浜市神奈川区(撮影/安井孝之)

 電気自動車(EV)で出遅れ気味の日本だが、国内市場でもEVのシェアはジワリと増え始めた。販売の現場で「クルマ屋」からの脱却の動きが見える。AERA 2023年4月10日号の記事を紹介する。

【写真】軽EVの「SAKURA」はこちら

*  *  *

 日本の電気自動車(EV)の普及スピードが今年に入って加速している。乗用車の新車販売(軽自動車・輸入車を含む)に対するEVシェアは1月が2.7%、2月が2.5%と2カ月連続で2%を超えた。国内のEV販売は2022年に1.7%とようやく1%を超えたが、その後も勢いは増している。

 もちろん新車販売に対するEVのシェアが約10%の欧州や約20%の中国に比べれば日本のシェアはまだ小さい。だが日産自動車と三菱自動車が共同開発し、昨年6月に発売した軽タイプのEV「サクラ」と「eKクロス EV」がEVを身近なものにした。この1、2月に売れたEVの約6割を軽タイプが占めた。まさに軽EVが国内のEV化の牽引役になっている。

 軽自動車は日常的な買い物や通勤通学に使われることが多い。1日の走行距離は30キロ程度。日産と三菱は航続距離を180キロと短くして、電池量を減らし価格を下げた。

 昨年12月に値上げをしたが、国の補助金を使うと200万円程度で買える。自治体の補助金も使えば100万円台となる。EVを手に届く価格にし、日常生活に使える商品につくり込んだことが好調な理由だ。

■好調な輸入車EV

 最近の国内市場で目立つのが、高額所得者が購入する輸入車EVの好調ぶりだ。日本自動車輸入組合によると、22年の輸入車(乗用車)のうち5.9%がEV。今年の1~2月の累計では8.2%に上昇した。

 輸入車の主な購入者層である高額所得者の市場に限れば、日本もEV先進地域である欧州の10%レベルに近づいている。EVで出遅れているトヨタ自動車も高級車ブランドのレクサスでは35年に100%のEV化を打ち出しているゆえんである。

 高額所得者の市場動向は先行指標だ。EVの販売価格が低下し、身近な存在になれば、EV市場は一気に拡大するだろう。軽EVと輸入車EVの好調ぶりから考えると、国内のEV市場はまさに夜明け前の明るさが見え始めた状態といえる。

著者プロフィールを見る
安井孝之

安井孝之

1957年生まれ。日経ビジネス記者を経て88年朝日新聞社に入社。東京、大阪の経済部で経済記事を書き、2005年に企業経営・経済政策担当の編集委員。17年に朝日新聞社を退職、Gemba Lab株式会社を設立。著書に『これからの優良企業』(PHP研究所)などがある。

安井孝之の記事一覧はこちら
次のページ