日産プリンス神奈川販売の販売店。受付前に展示されている軽EVの「SAKURA」(撮影/安井孝之)
日産プリンス神奈川販売の販売店。受付前に展示されている軽EVの「SAKURA」(撮影/安井孝之)

■100年に一度

 自動車業界には「100年に一度の大変革」が起きていると言われている。消費者と日々、対面する販売の前線でも大変革に向けた変化が見て取れる。

 メルセデス・ベンツが発売するEVブランド「メルセデス EQ」の全車種を展示するEV専門店「メルセデスEQ横浜」が昨年12月にオープンした。メルセデスとしては世界初のEV専門店だ。

「メルセデスEQ横浜」の井上雄道店長は「EVを購入しようとされているお客様の不安要素をまず取り除くのが最初のハードルです」と言う。

 スマホのように毎日、充電しなければいけないの? 充電器はどのように設置するの? マンション住まいだが、大丈夫?電池が劣化して下取り価格が下がらないか?……

 EVに興味はあるが、今買って後悔しないかと不安を抱いている客がまだ多いようだ。EVを販売するにはEVのメリット、デメリットや充電設備などの設置方法などガソリン車とは違う知識が販売員には必要なのだ。

「EQ横浜」には急速充電器、普通充電器のほかクルマと家との間で電気を融通し合う「V2H」機器も設置され、EVとその周辺電気設備の専門知識を持つ販売員が働いている。

 客が充電設備を使ったり、V2Hの設備に触れたりして、停電時にEVから家に電気が供給できることを知り、ガソリン車にはないEVの魅力を感じてもらう。販売員の力量が問われるところだ。

「EQ横浜」の近くにある日産プリンス神奈川販売・東神奈川店の目立つ場所に軽EV「サクラ」が展示されていた。販売促進部の吉川博晶課長は「まずはお客様のニーズ把握です」と言う。毎日100キロ以上走るような客にはサクラは薦めにくい。電池切れを心配しながら日々運転するのはストレスがたまるからだ。

 充電設備が設置できる戸建てに住み、毎日の走行距離は数十キロ、そして家にもう一台車があれば「サクラにピッタリ。ガソリン車を上回る走行性能やランニングコストの安さを実感してほしい」と吉川課長。

 高級車タイプにしろ、軽タイプにしろEVならば出かけるときにフル充電していれば、通勤や買い物などに使う程度なら、外での充電は不要だ。電気料金が値上がりしてはいるが、ガソリン車に比べれば軽タイプでもまだランニングコストは安い。そんな「EVライフ」をまずは知ってもらいながら、徐々にEVが身近な存在になりつつある、というのが国内EV市場の現在地である。

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