21年、ノミネートされたグラミー賞授賞式で、大ヒット曲「Dynamite」を披露した (c)BIGHIT
21年、ノミネートされたグラミー賞授賞式で、大ヒット曲「Dynamite」を披露した (c)BIGHIT MUSIC

 BTSはなぜ、世界を代表するポップスターに成長したのか。K-POPの伝道師として活躍し、2013年のデビュー当時から今日までBTSを見つめてきた古家正亨さんが分析した。AERA 2023年4月3日号から。

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 BTSが初めて日本でショーケースを行ったときの衝撃を、僕は忘れません。

 そのショーケースの司会を担当していた僕は、まず、リハーサルでのパフォーマンスの完成度の高さに驚かされました。

 彼らがデビューした2013年は、K-POPはいわゆる第2世代から第3世代に移行しようとしていた時期です。第1世代が韓国内で“アイドル”という価値を定着させたとすれば、第2世代はKARAや少女時代など、日本を拠点にした海外活動の展開を広めました。第3世代に入ると、BTSをはじめ、SEVENTEENやBLACKPINK、TWICEといった名だたるグループがグローバルな展開を始めました。アイドルからアーティストへ転換を図った時期でもありました。

■全身からパッション

 音楽的には耳に残るフレーズを重視したフックソングやEDMが中心だった中、まっすぐなヒップホップを携え、“同世代の代弁者”としてデビューしたのがBTSでした。初期から、楽曲のメッセージ性は際立っていました。「Paldo Gangsan」は方言で自分たちの生い立ちを歌っていましたし、そこには一人一人の、社会に認めてもらうにはどうしたらいいのかという意気込みや葛藤を感じました。

 説教臭さはまるでなく、実体験に基づいて書かれたリリック。それを一糸乱れぬパフォーマンスと生歌で表現しているのが新鮮で、メンバーの全身からはパッションが溢れていました。

 現場のスタッフには、当時から確信のようなものがあったと思います。僕自身、彼らが発信する“Love Myself, Love Yourself”という普遍的なメッセージは「将来的に広く必要とされるだろう」と直感しました。

 ただ、そうであってさえ、今日までの道のりは平坦ではなかった。彼らがやってきたことが世の中に受け入れられるまでには、時間もかかりました。

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