『聞き書き 世界のサッカー民スタジアムに転がる愛と差別と移民のはなし』(1870円〈税込み〉/カンゼン)
世界のサッカースタジアムに集うサポーターたち。贔屓のチームを愛し、熱く応援し、時には暴走する彼らの姿に柔らかなイラストと文章で迫りながら、実は彼らが背負うさまざまな運命や社会の矛盾までを描き出す。番外編としてマレーシアでスタジアムの芝管理をする日本人やJリーグで活躍するアフリカ系選手へのインタビューも。世界への目が開かれる一冊(photo 写真映像部・加藤夏子)
『聞き書き 世界のサッカー民スタジアムに転がる愛と差別と移民のはなし』(1870円〈税込み〉/カンゼン) 世界のサッカースタジアムに集うサポーターたち。贔屓のチームを愛し、熱く応援し、時には暴走する彼らの姿に柔らかなイラストと文章で迫りながら、実は彼らが背負うさまざまな運命や社会の矛盾までを描き出す。番外編としてマレーシアでスタジアムの芝管理をする日本人やJリーグで活躍するアフリカ系選手へのインタビューも。世界への目が開かれる一冊(photo 写真映像部・加藤夏子)

 何人であれ、最初から立ち入った話など聞けるわけもない。ところがサッカーの話を聞くうち、向こうから個人的な話も開示してくれるのだという。サッカー好き同士ならではの特権かもしれない。時には突拍子もない発言も出るが、金井さんの目はいつも広く、温かく開かれている。

「私は何を見るときでも『人間』を見るみたいなんです。実は私、中高はいわゆる進学校へ進んだのですが落ちこぼれてしまって、『自分には取りえがない』という気持ちをずっと抱えてきました。でもいろいろな経験を積み、30歳を過ぎた頃に『私は人を好きになるのは得意かもしれない』と思うようになりました」

 何かの専門家というわけではないと自覚する金井さんだが、「浅く広く担当」としていろいろなことに好奇心全開でぶつかっていく。コロナ禍にぶつかり、ネット取材になった章があったのは残念だったが、そこにも近い将来必ず足を運ぶつもりだという。

「狭い窮屈な場所だけが世界じゃない、もっと広いところがあるのだと、悩んでいた頃の自分に言ってあげたいです」

(ライター・千葉望)

AERA 2023年1月23日号