AERA2023年1月16日号より
AERA2023年1月16日号より

 東京大学が女性の教授・准教授を増やす試みをする中、その他の旧帝大でも同様の問題が叫ばれている。男性偏重の理由として「無意識のバイアス」を指摘する専門家もいる。AERA 2023年1月16日号の記事を紹介する。

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 女性教員が少ないのは東大に限らない。特にほとんどの旧帝大で女性教員の比率は10%台にとどまる。科学技術社会論が専門の東大の横山広美教授は、その理由を言う。

「女性研究者を審査する際、無意識のバイアスが影響することが指摘されています」

 天文学者は望遠鏡で観測したデータを論文にするので、観測時間の確保が重要。だが、米国のある天文台では、観測時間の確保の審査で、女性研究者に不利な傾向が見つかった。バイアス改善のために審査員に女性を増やし、注意を促した。さらに最近では申請者・審査員の双方の名前を伏せているという。

「こうした現象は、推薦書にも紛れこんでいることに注意が必要です」(横山教授)

 研究者が応募するとき、複数の教授による推薦書を提出する。ただ、女性の研究者の推薦書は文章が短く熱意をもって書かれていないことが明らかになっている。また、男性には「非常に優れている」と能力を評価する言葉が書かれているが、女性には「手先が器用」「真面目」と態度のことが書かれる傾向が報告されている。公募される研究者のポストは、たいてい一つ。その狭き門に入るための推薦書の内容がいま一歩だったら、採用されにくいかもしれない。

 女性の学生を増やす動きも活発だ。東京工業大学は22年11月、総合型・学校推薦型選抜で「女子枠」を設けると発表した。24年度に58人、25年度以降は143人に増やす。益一哉学長は言う。

「東工大の学部の女性比率は13%。しかもOECD(経済協力開発機構)によると、理工系進学者の女性割合は日本が最下位。変えなければいけない強い危機感があります。女子枠には賛否両論ありますが、30年後を見据えて行う施策です」

 河合塾によると、理系学部を志望する女性の割合が増え、追い風が吹いている。

「東工大の本質はきっと変わりませんが、『朝まで実験』みたいな体力勝負で、女性が入りにくいストレスフルな理工系のイメージは、男性のためにも変えていかなければならない」(益学長)

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