寺島有紀(てらしま・ゆき)/ベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応、企業の海外進出労務体制構築など人事労務コンサルティングが専門(写真:本人提供)
寺島有紀(てらしま・ゆき)/ベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応、企業の海外進出労務体制構築など人事労務コンサルティングが専門(写真:本人提供)

 何もかもうまくいっている──とは言えない日本に一筋、希望の光が欲しい。2023年、新リーダーとして期待できる起業家は誰か。寺島戦略社会保険 労務士事務所代表・寺島有紀さんに注目の10人を聞いた。AERA 2023年1月2-9日合併号の記事を紹介する。

【寺島有紀さんが選ぶ10人がこちら】

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 市場から高い評価を受けているベンチャー企業には二つの特色があります。

 社会課題の解決に取り組む意欲が強く、人的資本経営を重視していることです。これらを体現した起業家を2023年のトレンドにふさわしい注目の人物として紹介します。

 求人マッチングの「オープンワーク」は、社員・元社員のクチコミ情報サービスで成長しています。代表取締役社長の大澤陽樹さんは、経営コンサル社員として同社とのかかわりを深め、20年に創業者からバトンを引き継ぎました。働く人を支える意識が強く、自社の社員の働きがいや心理的安全性も重視する起業家マインドが感じられる経営者です。

「地方」もキーワードに挙げられます。長野県を拠点に、「社会課題解決」+「働く人が楽しい環境づくり」を実践しているのが、「はたらクリエイト」代表取締役CSIOの井上拓磨さんです。同社は、ライフステージに応じて女性が長期的にキャリアを醸成できる環境づくりを核に据えています。スタッフは子育て中の女性が中心。社内に託児所なども設置されています。

 社会課題を解決していく当事者意識でつながったチームには強さを感じます。そんな組織を牽引できるのは、従業員目線も忘れないバランス感覚にすぐれたマイルドなリーダーです。

 福島県に本社を構える「陽と人」代表取締役の小林味愛さんは、国家公務員や民間コンサル勤務を経て起業しました。東京と福島で2拠点生活を送りながら、福島産の農産物の生産・流通・卸売事業や、地域資源を活用したフェムテック商品の企画・販売事業を行い、地方と都市をつなぐ役割を担っています。

 地方をベースに海外進出を果たしたベンチャー企業もあります。山形県鶴岡市に本社のある「WAKAZE」は、パリで日本酒づくりにチャレンジし、味にうるさいフランス人から好評を得ています。代表取締役社長の稲川琢磨さんの日本酒への思い入れの強さもさることながら、海外で日本酒を醸造するという大胆な発想と行動力に敬服します。フロンティア精神旺盛なこのベンチャートップは、間違いなく日本酒を世界に広めた立役者の一人です。

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