静岡県裾野市の保育園では1歳児クラスの元保育士3人が逮捕された。その後も各地で暴行が発覚し、不安は高まるが「人気園はどこもパンパンで転園は非現実的」(富山市の女性)との声も
静岡県裾野市の保育園では1歳児クラスの元保育士3人が逮捕された。その後も各地で暴行が発覚し、不安は高まるが「人気園はどこもパンパンで転園は非現実的」(富山市の女性)との声も

 静岡県裾野市の保育園では1歳児クラスの元保育士3人が逮捕され、その後も各地で暴行が発覚している。保育園の勤務実態と、被害を口にできない幼き子どもたちを預け先の暴行から守るすべを探った。AERA 2022年12月26日号の記事を紹介する。

【図表】不適切な保育が起こる3つの主な背景がこちら

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 いびつな上下関係は、保育士間でも起こっている。パワハラ保育士に悩む若手は多く、SNS上では残業や雑務を強要されたなどの投稿が目立つ。 

「長い園では1日11~12時間開所していますが、保育室は極めて特異な労働環境です。保育者は各保育室に入るので、管理者は全部を把握することはできません。閉ざされた空間に、子どもと保育者がずっといるわけです。その中で、子どもと保育者、保育者同士の人間関係が上位下位になって権力が固定化され、時にはいびつになっていく背景が生まれます」(小崎さん) 

 公立保育園で保育士として働く愛知県の30代の女性保育士はモヤモヤを管理職に話したところ、翌日には問題の保育士が管理職から呼び出された。すると、この保育士は「言ったのは誰か!」と、ロッカールームで犯人捜しが始まった。それ以来、何も言えなくなったという。結局“危うい保育”の保育士も勤務し続けた。 

「問題があっても保育士は不足しているため、園としても解雇しない。系列の園に配置換えくらいで終わりでした」(30代女性保育士) 

 静岡県裾野市の事件のような組織ぐるみの隠蔽(いんぺい)が疑われる案件でも、あきらめずに声を上げる必要がある。小崎さんは言う。 

「相談ルートとしては第三者委員もあります。社会福祉協議会、あるいは行政にダイレクトに言うこともできます。相談先は園だけではないんです」 

■コロナで目届きにくく 

 管理者の対策として保育室にカメラを設置する園も増えてきているが、賛否両論ある。静岡県の保育士の女性(40)は、働きづらさを感じつつも設置を望んでいる。 

「ほとんどの保育士は、低賃金でも子どものために愛情を持って保育しています。虐待の報道が相次ぐことで疑いの目を向けられ、悲しくなっちゃうねって保育士同士で話しています。カメラを設置すれば私たちがどれだけがんばっているか理解してもらえるかもしれないので、付けてほしいです」 

 ただ、小崎さんは設置の際には慎重さも必要だという。 

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