差別や人権問題に抗議し、イラン戦の前に片ひざをつくイングランドの選手たち(photo ロイター/アフロ)
差別や人権問題に抗議し、イラン戦の前に片ひざをつくイングランドの選手たち(photo ロイター/アフロ)

 サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会は、開催国や自国の人権状況に対して、選手たちが抗議する場でもあった。ノンフィクションライター・木村元彦さんが、サッカーと人権問題について語る。2022年12月26日号の記事を紹介する。

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 今大会、FIFA(国際サッカー連盟)はロシアを出場停止処分としました。ウクライナ侵攻が理由ですが、処分を下したきっかけは今年2月、ポーランド・サッカー協会がW杯欧州予選プレーオフでロシアとの対戦拒否を表明したことでした。

 私は7月、同協会を訪ね、話を聞きました。

 最初に声を上げたのはエースのレバンドフスキをはじめとする選手たちでした。プレーオフをボイコットすれば当然、W杯には出場できないし、FIFAの制裁を受ける可能性もある。それでもかまわない、と。選手たちの反侵略の意思は非常に強かったそうです。

 FIFAは当初、「ロシアサッカー連合」として出場を認めるようなウルトラCを考えていたようです。けれど、ポーランドに続いてスウェーデンとチェコも対戦拒否を表明したことを受けて、処分を決定しました。妥当な判断だったと思います。

 一方、昨年夏の東京五輪と今年2月の北京冬季五輪では、国ぐるみのドーピング問題が発覚したロシアの選手は、国の代表としては出場を認められない代わりに、個人資格で出場できました。戦争は選手個人では止められませんが、ドーピング違反は選手自身が関与しています。後者のほうが選手の罪は重い。FIFAとIOC(国際オリンピック委員会)は組織が違うとはいえ、矛盾を感じざるを得ません。

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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