多賀太(たが・ふとし)/専門は教育社会学、男性学。男性の非暴力啓発運動も行う。著作に『ジェンダーで読み解く男性の働き方・暮らし方』など(写真:本人提供)
多賀太(たが・ふとし)/専門は教育社会学、男性学。男性の非暴力啓発運動も行う。著作に『ジェンダーで読み解く男性の働き方・暮らし方』など(写真:本人提供)

 被害に遭いながらも耐えたりやり過ごしたり、それが当たり前で異議申し立てなど思ってもいないような文化で育ってきていることで、女性たちがセクハラの被害に声をあげたときに「みんなつらいのに、自分だけ告発なんかしやがって」という歪んだ不満のはけ口につながってしまい、本当に対峙すべき「被害者を生むハラスメント文化」にまっすぐ向き合えていない人も多くいると思います。

 男性こそ、声をあげるべきです。これは今後解消されるべきことですが、現実には発言力のあるポジションの多くが男性で占められています。社会を変えるには、そういった強い立場の男性が毅然と声をあげることが重要です。また、男性はセクハラに関して女性から何か言われると糾弾されるのではと身構えてしまうこともあります。男性から男性に「これって良くないよね」と伝えていくことは、効果的であり、重要です。

 ただ、男性の中には心のどこかで、大なり小なり自分もセクハラをしたことがあるかもという不安があり、そんな自分がセクハラ反対の声をあげると「お前が言うな」と返される。それを恐れている人もいると思います。もちろん、過去に被害に遭った人からすれば、そういう男性が反省して声をあげてもそう簡単に許せるものではないし、聞く気になれないかもしれません。ただ社会全体で見れば、過去に加害をした人は声をあげる資格がないと言っていたらいつまでたっても変わりません。そういう人の声の方が、いま加害行為をしてしまっている人に届きやすい面もあるのでは。昔の罪に気づいて反省し、声をあげる人々をポジティブにサポートすることも重要だと思います。

(構成/編集部・小長光哲郎)

AERA 2022年11月21日号